2009年10月4日日曜日

社会保障関係特別会計のまとめ

何回かにわたってまとめてきた特別会計の仕組みへのリンクをまとめました。

1.国民健康保険の仕組み (基本
2.  同上   (退職・前期高齢
3.  同上   (国保からの負担
4.介護保険の仕組み
5.後期高齢者医療保険の仕組み
6.老人保健の仕組み
7.(番外)健保組合の負担

大阪と東京

以前より大阪の自治体の財政が厳しいことはこのブログでも何度か記事に取り上げました。
東京と大阪は大都市の郊外で状況が似ていると思われるのに、なぜ違いが出ているのかと疑問に思っていたので、調べてみました。
 データ元は総務省の平成19年度市町村別決算状況調より。
 比較対象は、東京都下の26市と、大阪府下の政令指定都市を除く市です。
 まず全体を人口で割った人口一人当たりの数字で比較して、仮説を立ててみます。

 まずは一人当たりの基準財政需要額と基準財政収入額(今後は特に断らない限りは人口一人当たりとします。)
 東京:需要12.9万円、収入14.3万円。
 大阪:需要14.2万円、収入12.0万円。
  ちょうど需要と収入の数字が逆になっている感じです。
 市税収入は
 東京:18万円、大阪15.2万円と 市税収入の差が、そのまま収入の差に反映されているようです。
 一方、地方交付税が東京は5千円、大阪は2.6万円なので、この時点で収入面での差はかなりの部分が解消されています。
 さらに、国庫支出金が東京3.4万円、大阪4.0万円なので、国庫支出金を合わせればまったく差がなくなります。 一方都道府県支出金は、東京が3.4万円、大阪は1.7万円で、東京都と大阪府の財政力の差が反映されていると見られます。
 また公債費は東京1.2万円、大阪2.2万円で大阪の方が多くなっています。

 歳出面では総額は東京31.6万円、大阪31.4万円とほぼ同じです。
 しかし公債費が大阪は3.3万円、東京が2.6万円なので実質的な市民サービスや投資にかけているお金は東京の方が1万円程度多くなっている計算です。
 目的別で主なものを見てみると
  民生費 東京11.8万円、大阪11.3万円。
   うち児童福祉 東京4.5万円、大阪3.8万円
     生活保護 東京2.4万円、大阪3.1万円
  教育費 東京4.1万円、大阪3.1万円
  総務費 東京4.4万円、大阪3.6万円

 性質別で見ると
  人件費 東京6.3万円、大阪7.2万円
  扶助費はほぼ同じ。
  物件費 東京4.9万円、大阪3.5万円(うち委託費おのおの3.1万円、2.1万円)
  補助費 東京3.4万円、大阪9千円
  建設費 東京3.4万円、大阪2.3万円
    (ちなみに土木費という切り口だと大阪の方が若干多い)
 
 経常収支比率(臨時財政対策債含む)は東京は86.3~102.1、大阪は93.2~106.5に分布。
  100を超える市が東京は一つですが、大阪は14も(31市中)あります。

 上記から予想されることとしては、(大阪の方から見て)
 ①市税収入と都又は府からの支出金が少なく、交付金や国庫支出金である程度埋め合わせがされているが、なお収入は少ない。。
 ②人件費と公債費、扶助費のうち生活保護の割合が多いため、財政の硬直度の度合いが高い。
 ③児童福祉と教育費を減らすことで対応している。
 と思われます。

 さてここで。東京と大阪を比べたのですが、東京そのものが全国から見れば特殊かもしれません。
 次回は大阪と全国を比較してみます。
 

決算を読むシリーズ 軽自動車税

市税の中でマイナーですが、軽自動車税というものがあります。
軽自動車以外の自動車の保有台数は10年前と比較すると約5万4千台から約5万2千台と減少していますが、一時期のガソリンの高騰などもあり、軽自動車はむしろ増えています。
 軽自動車税は平成20年度は9千7百万円と前年の9千4百万円から増加。10年前と比較すると3千万円近くも増えています。(細かく見ると原付が減って、軽自動車が増えているようです。)

 じゃあ、市にとっては軽自動車を買ったほうがいいんじゃないということになりますが。。
 自動車については自動車取得税(都税)の一部からそれぞれの市に道路の長さや面積に応じて配分される「自動車取得税交付金」というものがあります。
 こちらの方は平成20年度で約3.7億円と軽自動車税の3倍以上のお金になっています。
 ちなみに10年前は4.3億円ですから、軽自動車税とトータルすると減っていることになります。
 交付金の方は、自動車の台数ではなく道路の面積に比例するので、日野市の自動車が減っても交付金は減りませんが、同じことを全ての市がやると、結果的に交付金全体が減るのでみんなの収入が減るということになります。 

市民財政白書を作る(番外) 健保組合のお金

さて前回まで国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療とその前身である老人保健の特別会計に関わるお金の流れを紐解きました。
 そのたびに出てくる、健保等というサラリーマンや公務員が入る健康保険に関わるお金の流れを説明します。
 前回までは国民健康保険を主体としていたので、まとめて「健保等」となっていますが、大きくは3つのまとまりがあります。健康保険の適用事務所で働く社員が入る「健康保険組合」。社会保険庁が運営していた政府管掌健康保険から変わった「全国健康保険協会」(いわゆる協会けんぽ)、これは中小企業等の従業員や家族が入るもの。そして国家公務員や地方公務員、私学の教職員などの「各種共済」です。これらの対象者はあわせて約7650万人(家族を含めて)となります。
 下の図は全国レベルでのお金の出入り。単位は兆円(!)です。

 国から約6000億円の負担がありますが、これは健康保険協会に対するものです。

 さて、日野市民のうちこれらの制度の対象となっている人数は、国民健康保険の対象者を除いて約13万人となります。仮に全国の健保等の加入者数と単純に比例すると考えると、下記の緑色の数字が日野市民負担と計算される数字になります。単位は億円。
 日野市の個人市民税が約130億円ですが、その2.5倍の保険料を支払っている計算になります。確かに実感としても合っている気がします。
 そのうち、約53%が本人と家族の医療費。1/6弱が後期高齢者分の負担(日野市の高齢者ではなく、全国にある基準で分けられる)、1/8強が前期高齢者分の負担(これも全国へ)、後は介護保険料の分が支払基金を通じて介護保険の、退職医療の分が国民健康保険の(この2つは日野市の特別会計に?)ために負担されています。


この仕組みをどう評価するかは人それぞれと思いますが、まずこれを把握している人はあまりいないのではと思いました。知らなければ評価も何もできないので。
 自分で言うのはなんですが、なかなか画期的だと思うのですが。精度は悪いですが。