今日のブックレビューは中央公論社(既に倒産) 日本の名著 二宮尊徳
昭和45年初版発行 古本屋にて購入。市の図書館ではあるかも。大きな書店なら新しいシリーズで出ているかもしれない。
二宮尊徳といえば、薪を背負って本を読んでいる子どもとして有名ですが、(交通安全教育上よくないというので、例の像は減っているらしいですが。)幕末に領主や農村の財政を立て直した実績とその手法が高く評価されています。
二宮尊徳の財政再建の手法は「報徳仕法」と呼ばれ、「分度」と「推譲」が重要な柱となっています。
分度というのは、財産相応の計画性をさし、「予算を立て、その中で生活すること」を分度を守るというようです。
十石の収入があるところに、十一石で暮らせば貧賤が入り込み、九石で食らえば富貴が入り込むといった具合の非常に単純明快でわかりやすい。(やろうと思うとなかなかできない)。
十石のところ九石で暮らしたらあまった一石はどうするか、それは将来や共同体のために譲る。これを推譲という、現在の感覚からすると将来への投資や公共への還元ともいえるかもしれません。
これだけをみると「この程度のことか」と思うでしょうが、二宮尊徳はこれを徹底して行い、かつ労力と知恵を惜しまず注ぎ込み、多くの荒廃した村や武家を再生させてきたのです。
この分度と推譲を国や市の財政に当てはめて考えるとどうでしょう。
相馬藩の財政立て直しを図った際、その前180年間の収入をみて、分度を定めたそうです。インフレがあるので現代で同じことはできませんが、今の国や地方自治体が直近10年の収入を見た財政運営を行っているでしょうか。
入ってくる以上に使い、将来に譲るどころか先食いをしてはいないでしょうか。
二宮尊徳というと、戦前の修身の教科書に出てくるような古臭いイメージがありますが、尊徳の生涯を書いた「報徳記」の部分だけでも読むと、時代を超えた普遍的な考えもあり、興味深いと思います。