2009年3月10日火曜日

地方交付税と地方債 第一話

これまで各市の白書を紹介したり、ニュースを紹介する中でよく出てくる地方交付税の話。
ブログの中でも、解説しなければと書いていたのですが、なかなか機会がありませんでした。

行政が出している白書のほとんどが、交付税と最近の改革による地方債について説明しています。
これそのものがいろいろな経緯から生じているものであり、とても一言で簡単に説明できるものではありません。
かといって長々と説明したのでは、退屈してしまいます。
ということで、長い説明でも物語にすれば読んでもらえるのでは?と考え、この企画を始めました。
 企画倒れになったらごめんなさい。

 第一話 息子たちに町を任せるのじゃ。

 ここは猫の国。一代で国を築いた王、猫吉の国です。
 ある日、猫吉は三人の息子、猫太郎、猫次郎、猫三郎を呼びました。

 猫吉「息子たちよ。明日から、お前たち三人にこの国の3つの町を治めてもらうことにする。猫太郎は海辺の町、猫次郎は川辺の町、猫三郎は山辺の町を治めてもらうこととする。」(これから猫吉はこの色の文字とします。)
 息子たちは顔を見合わせました。猫三郎が不満そうな表情を見せます。その表情を確認したかのように言いました。
 「もちろん、海辺の町が一番豊かなことは知っている。川辺の町や山辺の町が大変なこともな。そこでじゃ。それぞれの町を治めていくのに最低限必要なお金はわしが保障しよう。」
 「どこから出るのかは心配不要じゃ。今までとっていた年貢を全部お前たちにやるわけではない。わしにはこの国全体を治めていく役割がある。だから年貢の半分を息子たちに、残りはわしにこれまでどおりに納めてもらう。最低限必要なお金に足りない部分は、わしが受け取る年貢の中の一定割合をそのためにとっておくからそこから出そう。」

 猫次郎「父上。最低限必要なお金はどうやって決めるのですか。」(猫次郎はこの文字です以下同文)猫次郎が聞きます
 「それはだな、町の広さとか猫の数とかいろいろなものを考慮して、わしが決める。」
 猫三郎「最低限しか保障されないんじゃ。工夫のしようがないですよ。」
 猫太郎「最低限が必ず保障されるのでは、頑張る努力をしなくなるのではないでしょうか。」
 「まあまあ、そういうこともあろう。そこでだ、君たちの年貢のうちの3/4が、その最低限に必要なお金に足りないときは、その部分を保障しようじゃないか。だから、努力したからとって収入がふえないということはないぞ。それからその1/4は必要最低限以外のことにもまわすことができるというわけじゃ。」
 
(解説)
 地方交付税の目的は、それぞれの市町村の財政力の格差を解消することです。
 格差を解消するというと、豊かな方の市のお金をそうでないほうの市に回すというイメージがありますが、実際には国に入ってくる税収の一定割合を財源が不足する市に国から交付するという形としています。
 猫次郎の発言にもありましたが、それぞれの市で必要なお金とか、足りないお金はどう決めるのでしょうか。
 それは国が基準を作っているのです。(「普通交付税に関する省令」に定められています。)
 国の基準による歳入(標準税収入)が例えば100億円あるとすると、その75%の75億円が基準財政収入額となり、一方これまた国の基準による歳出(基準財政需要額)が100億円だとすると、その差額の25億円が国からもらえるという仕組みです。

 総務省による説明はこちらのページ
  http://www.soumu.go.jp/c-zaisei/gaiyo.html

註)今の法律では国と自治体は基本的には対等ということになっていますが、戦前には知事が国から派遣されていたり、戦後も市町村の仕事の4割は国の仕事の下請けだったりしたなど、歴史的に国が上、地方が下という時代が長く、行政・市民ともにその発想が染み付いているので、国を親猫である猫吉、市を子猫にたとえてみました。
 この例に限らず、あくまでわかりやすく例えているに過ぎないことをご承知おきください。