2009年2月23日月曜日

連載:財政白書の未来 第5回

第5回です。(前回はこちら)(目次はこちら



第五回 市民による財政分析の未来 その2

  ~モジュール化とネットワーク化~
 各論について市民が分析をする際のもう一つのハードルは分析手法が確立しないことです。
 もちろん情報と時間さえあればできますが、時間が自由に使える人しか参加できないというのでは財政分析の動きが広まっていきません。

 各市の抱える問題は個別性が高いものです。その市の財政に影響を及ぼす主な論点のバリエーションは市の数と同じ数だけあるかもしれません。例えば福祉一つとってみても、各市によりその様相は様々であると予想されます。
 一方、多くの市で共通する問題もあるでしょう。例えば福祉の中でも、国民健康保険に関する問題はほぼ全ての市で共通と考えられます。
 このように、福祉という大きな区切りではバリエーションが豊富でも、ある程度細かい問題に区切ればその内容は共通点が多くなると予想されます。仮に10%の自治体しか同じ問題を抱えていないとしても、全国約1800の市町村があることを考えれば約180の自治体で共通する問題となるのです。

 細かい問題に区切って分析をした場合、その分析をした手法や表は他の自治体でも活用可能です。これを市境、県境を越えて広く共有できれば、分析の手間が軽くなると共に、既にあるものをベースに考えることにより、よりよい分析が可能になるものと考えます。
 
 このように、問題を細分化して広く共有化できるものにすること(モジュール化)とそれを多くの人で共有し情報を交換しながら内容をよくしていくこと(ネットワーク化)が、今後各論の分析を市民側で進める大きな助けとなるでしょう。
 そのイメージは下図



 ここで出てくる一つの課題は、「そのネットワークはどこにあるのか?」「どのように形成されるのか?」ということであろうかと思います。いずれにせよこのネットワークが機能するためには、多数の市で分析が行われ、多数の分析モジュールがネットワーク上にアップされていることが必要です。
 したがってある段階までは広がる速度は遅く、ある時点から急速に広がるのではないかと予測されます。おそらく公的な形ではなく、私的な自然発生的な形で提供されるでしょう。
 基本的にはGoogleのドキュメント公開機能などをベースとしたものになると思いますが、IT環境・技術は日進月歩であり、新しい技術・サービスを活用したネットワークが今後生まれてくる可能性もあります。
 今後具体的にどのような道筋をたどるのか、今後とも考察を重ねるとともに、まとまったら別の機会にまた書いていきたいと思います。
 日野市財政を考える会では上記のようなネットワークづくり、分析モジュールづくりについても取り組んでいきたいと考えています。

 次回は第6回として、「情報発信の未来形」をお送りします。