2009年8月13日木曜日

ブックレビュー 資本主義の未来 その3

資本主義の未来 3回目です。(前回はこちら)
 大きな動きとして人口の増加・移動・高齢化について
○人口爆発
 ・世界の人口は現在(1996年当時)の57億人から2030年には85億人と28億人増加。(ちなみに現在は約 億人)そのうち20億人が一日当たり平均所得2ドル以下の国で生まれる。
 ・当面の問題は食料ではなく水。
 ・人口抑制をする国とそうでない国の間で所得格差が拡大する。
○人口移動
 ・将来第三世界から大量に人口が移動することははっきりしている。
  1995年現在アメリカ人の9%が外国出身者。カリフォルニアでは25が外国で生まれた人。
 ・人口移動の圧力が高くなっている。
  ・テレビを通じもっとも豊かな生活水準をどこでも目にすることができる。
  ・カリフォルニアはメキシコの20倍所得が高く、歩いて国境を越えられる。つかまっても失うものはない。カリフォルニア州の刑務所の生活水準はメキシコの村よりも高い。
 ・移民が経済的に自立するためには教育が必要だが、そのコストを払おうとする人はない。
  しかし誰も払わなければ、社会の内部に第三世界の社会を築くことを決心したと同じになる。
○高齢化
 ・所得の多くを政府に依存し、豊かで投票権を持つ高齢者を大量に抱えることになる。
 ・2030年にはアメリカでも一人の高齢者をわずか1.7人で支えることになる。
 ・アメリカの高齢者は平均して所得の40%強を政府に依存し、40%の人たちは所得の80%を政府に依存している。
 ・この膨大な所得移転があるため、高齢者は選挙のとき唯一つの問題しか考えなくなっている。
 ・高齢者の必要と要求によって福祉国家は土台を揺さぶられ実質上解体に追い込まれている。   今のペースで給付が増えれば財政は間違いなく破綻する。
 ・高齢者の支出に食われてインフラ、教育、研究開発への投資が削られている。
 ・1970年代は年齢別に見た貧困者の比率は高齢者が一番高かったが、現在は逆。
  アメリカでは引退すると実質的な生活水準は上がる人が多い。
  アメリカの高齢者の一人当たり所得は国民全体の平均より67%も多い。
 ・貧困層の年齢別構成を見ると一番比率が高いのは18歳未満の選挙権のない子ども。   それに対して政府は子どもの9倍ものお金を選挙権がある高齢者のために使っている。   子どもたちが十分な収入を得られるだけの技能を身につけられなければどうやって高齢者を支える税金を払うことができるのか。
 ・1990年当時で政府の債務残高は日本はGDPの79%(現在160%ぐらい)年金未積立債務は218%!
 ・民主主義社会で高齢者向け福祉予算の伸びをどう抑えられるか誰にもわからない。普通選挙になって100年に満たない歴史の中で、高齢者の経済的要求への対応を迫られるときに、民主主義は最終試験を受けることになる。
 高齢者向け福祉を抑制しない限り民主主義に長期的な未来はない。
 ・引退年齢を引き上げ早期引退をなくす必要。かつては65歳で引退していたが、現在は62歳になっている。
  (上記はアメリカの話。日本ではおそらく逆になっている。)寿命が延び引退が早くなれば財源が不足するのは当然。
 ・低所得者のわかもとが払う税金を、高所得者の高齢者の生活に使うような福祉制度はおかしい。   年齢に関わらず同一所得には同一の税を課すべし。
 ・給与から引かれる社会保障税を高齢者への給付に充てていると「タックスウェッジ」という現象が生ずる。
  ・経営者からみると雇用コストは高いように思われる。
  ・勤労者から見ると安くこき使われるように思われる。
   →双方ともこの制度から逃れようとしてしまう。
    →海外への生産拠点の移転。 アングラ経済。
  ・残った人のコストはさらに高くなり、さらに逃れようとする人が増える。
   →長期的には給与から天引きして福祉コストに充てる制度は崩壊する。
 ・「第二世代問題」
  ・福祉制度が最初に作られたときはできる限りそれに頼らないようにしようという気風があるが(万が一のときに使うもの)、長い間経つうちに、使った方が楽なときにはいつでも使える権利になること。
  ・経済的に存続可能な特権が、存続不可能な権利になってしまった。
 ・めったにない大規模な災害のリスクは政府に負わせようとするばかりではなく、簡単に払えるはずの日常的な経費さえ政府や企業に負担させようとしており、所得再配分の要求とそのために必要な税金を負担しようとする意思の間に埋めようのないギャップが生まれている。

次回は第6章第7章を取り上げます。