(前回はこちら) (目次はこちら)長くなったので2回に分けます。
財政白書の未来
第2回 財政白書の未来形(その1)
~ 財政白書は各論指向へ~
○なぜ各論指向になるのか
今後財政白書は市民が作るものも、行政が作るものも各論指向が進むものと考えられます。
まず、市民が作る財政白書についていえば、総論編のみを継続して出していくのは実際のところ難しく、各論に移っていかざるを得ないという面があります。
その理由としては
- 初回は財政資料の分析そのものが新しいものの発見につながる部分があるが、二回目以降は新しい発見はあまりなく、仮にあっても初回ほどではない。
- 第二回目以降はデータの更新のみであるとはいえ、相当なマンパワーを必要とするが、発表しても初回ほどの話題性およびインパクトはなく、作るモチベーションが下がりがち。
- 市民が財政白書を作るきっかけとして、特定の事業の実施又は廃止に疑問を感じた市民が動き出した、というようなこともあり、そもそも興味は各論にある。
があげられます。市民としては財政全体の認識の仕方というよりも、個別の議論のほうが議論しやすく、実際に市民が既に作っている財政白書では各論が充実しているものもあります。
一方行政の作っている財政白書は業務として作れるということもあり、各論編を作る動機付けは市民の場合ほど強くはないと考えられます。とはいえ今後は以下の理由により、各論化が進んでいくものと想定されます。
財政白書は市民に財政状況を伝え、理解してもらうことがことを意図していますが、そもそも市民に財政状況を伝え、理解してもらおうとする理由はなんでしょうか?
1:やろうとする施策又はやめようとする施策、市民に負担を求めることに関して、市民の理解を求めること。
実際には行政としては財政白書の中ではっきりはいいにくい面があり、これを主目的とする行政の財政白書はまだないのではないかと思います。
2:市の財政状況の状況を訴えることで、市民に気づきを与え何らかのアクションをしてもらうこと、具体的には市政への参画を促すこと
例えば日野市の場合は、「わかりやすい財政資料を作る」→「市民参画による健全財政を検討する」ことが総合計画に位置づけられています。他の市における位置づけは未調査ですが、おそらくこちらの目的が主であると考えられます。
仮に財政白書の発行により2番目の目的達成に一定の効果が現れたとすると、必然的に「財政状況を十分に理解した市民の参画の下」「市の計画、施策や事業について議論を交わす」ということが起こってくると考えられます。
そのような段階になれば、そこで行われる議論はそれぞれの計画・施策・事業といった各論になることは自然であるといえます。「財政状況を十分に理解した市民の参画の下」に行われる議論を有効にするには、各論に関する財政分析に基づく議論でなければなりません。その議論のベースとして各論の財政白書が必要となってくるでしょう。
このように、市民側、行政側ともに各論化の流れであろうと思われますが、当面は市民の財政白書が先行する形で各論化が進んでいくものと思われます。
次回は、上記のような各論の分析とともに起こると予想される計画指向についてお話します。
第三回「財政白書の未来形 ~ 財政白書は計画指向へ~ 」