2009年2月28日土曜日

長野県下條村

日経ビジネスオンラインより

長野県下條村、出生率「2.04」の必然』

 日経ビジネスオンラインで非常に興味深い記事があったので、概要を紹介します。
 http://business.nikkeibp.co.jp/
 登録制なのですが、無料です。別に宣伝ではないですが、興味がわきましたら登録して読まれるとよいと思います。

○概要:長野県南部の下條村は出生率を向上させたことで全国的に知られる村。合計特殊出生率が2.04(全国1.34)
   その村の20年を紹介した記事。面白いと思った部分を取り上げてみます。

 「子供の声を聞くと、年寄りの背中がピシっと伸びる。子供を増やすのが最大の高齢化対策だな」。下條村の村長、伊藤喜平氏はそう言って相好を崩した。 」 ~ 少子化対策は高齢化対策

 「村民増」の第一歩は行財政改革。として、国や県が推進する農業集落排水処理施設の建設をあえてしなかった。
  試算するとコストは約45億円、補助金が出るし地方債も発行できる、その元利払いは交付税で面倒をみてもらえる。だけどもその後30年間、借金の返済と運営で1.7億円必要になる。人件費も1.6億円かかる。
 →全戸に合併処理浄化槽を設置すれば約6億3000万円しかかからない。村の負担金は2億2000万円で済み、単年度で処理できる。
  ~ 国や県のいうことを無批判に聞かず、よく検討した結果3億円もの資金が。

「生活道路は住民が作る!簡単に言うと、砂利やコンクリートなどの材料費は村で負担するから自分たちで道路を造ってくれ、という制度。この事業で造られた道路や水路は今や1000カ所以上。下條村を車で走ると、手書きの「年月日」が刻印された白い道が至る所で目に入る。  この道路造りは別の効果をもたらした。地域のコミュニティーが活性化したのだ。「共同でやる作業はだんだんと減っていたが、皆が共通の目標を持つことで、集落の活動が盛んになったね」

「既に子供を持つ、もしくは今後、子供をつくる気がある若い夫婦に定住してもらおうと、村が賃貸マンションを建てた。が最初に国の補助金を入れたら大失敗。いろいろな縛りがあって入居者を抽選で決めたが、抽選で入居したある家族は地域活動に一切参加せず、住民と摩擦を起こした。さらに、家賃まで滞納するようになった。2棟目以降、すべて村の自主財源で建てることに決めた。カネはかかるが、村が望む人々を選ぶことができると考えた。
 ~ 国の制度のゆえによいものができないという事例。

地方自立政策研究所役割分担明確化研究会が著した『地方自治 自立へのシナリオ』(東洋経済新報社)には興味深い例が出ている。「特殊教育設備整備費補助金」という国の補助金。実際の補助金額は13万6000円だが、事務コストを試算してみると、15万9000円がかかっていた。実際の補助金よりも事務コストの方が高いとはどういうことなのか。これは極端としても、補助金のかなりの部分が事務コストに消えているのは間違いない。

霞が関の政策よりも、人口4000人の村が財布をやりくりして打った政策の方が出生率の向上に寄与している。
 地域のニーズを知っているのは住民に身近な市町村だ。出生率を上げた下條村を見ても分かるように、住民の生活に直結したサービスに関して言えば、少なくとも市町村の方がカネをうまく使う。これは子育てだけの話ではない。
 
~ 下條村が国の制度に縛られずできたのも、合理的な投資で財政がよくなったから。そういう意味でも健全財政の重要さを感じた記事でした。