今回は第9話です。
前回(こちら)は王子たちの費用を保証するために借金をしていたという件でした。
第九話 王子も応分の負担を
猫介が帰っていった後、猫吉はまた王子たちに手紙を出しました。最近王子たちを呼び寄せることが多くて困ります。そういう時は大体いいにくい話をするときだからです。
王子たちが集まりました。猫太郎の顔が少し明るくみえました。海辺の町でとれる魚が犬の国でブームになり、売上が絶好調、他の町との格差は広がりましたが、猫の国全体としては少しずつ景気を回復しつつあるようでした。
「今日呼び寄せたのは他でもない」といって猫吉は『最低必要なお金』を払うために借金をしていることを王子たちに話しました。王子たちはその話はなんとなく知っていたので、なぜいまさらそんな話をするのだろうかといぶかっています。
猫吉「この借金はとりもなおさず、君たちのためにしたものであるが、これまでは全てわしの責任で借金をしてきた。これからは君たちにも応分の負担をしてもらいたい。」
猫次郎「私たちは最低限に足りない部分を頂いているにすぎないのです。借金をしたらどうやって返せばよいのですか。」
「後年元利払に充てるお金は『最低限必要なお金に入れてあげよう。』」
といいましたが、王子たちは眉一つ動かしません。
ここのところ王が決める『最低限必要なお金』がじりじりと下げられてきているからです。後で入れてあげるといわれても実質的に入ることになるのか。もうわからないのです。
<解説>
地方交付税を交付するために国が借金をしていたことは前回以前にお話しました。
当初は国の借金だったのですが、国の財政も苦しくなってきたため、平成10年度から12年度までは国が借金をし、返済は国と地方公共団体(都道府県と市町村)が半分ずつ返済することとしていました。(各市町村がどう負担するかはわかりません。)
その後さらに制度が改正され、平成13年度からは財源不足の一定割合を、県や市が「借金を行ってもよい」ことになりました。この制度に基づき起こした市債は「臨時財政対策債」といいます。
これも本来地方財政法でやってはならないとされている赤字公債で、他の法律で特別に認められているものです。
しかしいまや臨時財政対策債の各市町村の市債の残高に占める割合は相当なものになりつつあり、将来の公債費としてそれぞれの町の財政を圧迫する恐れが高まっています。
ふうぅ~やっと臨時財政対策債にたどり着いた。 多少でも理解の助けになればと思います。
今回でこのコラムは終わります。でもお話はもう少しだけ続きます。
<後日談>
そんなある時、犬の国で伝染病が大流行しました。なんと原因は猫の国の魚のようです。
これまで飛ぶように売れていた魚はぱったりと売れなくなり、海辺の町は暗く沈みこんでいます。
またしても王子たちが呼ばれました。
猫吉は「今回は犬の国も含んだ100年に一度の危機である。ここは大規模な景気対策を。」
といいますが、猫の王子たちはうつむいたままです。猫吉もこれまでの対策があまりうまくいっていないので、声にも張りがありません。
これから猫の国はどうなるのでしょうか。それは誰にもわかりません。
(終わり)