リーマンショック以来 「アメリカ型資本主義の終わり」をセンセーショナルに書いている資本主義本がいろいろと出ていますが、今日紹介するのは1996年、今から12年以上前に出版された
レスター・C・サロー著 資本主義の未来(The future of Capitalism)
たぶん絶版していると思いますが、大きな書店ならあるかも(アマゾンなら中古で買える)。図書館で借りても読む価値あり。
10年以上前に書かれたものですが、内容は古さを感じさせず、むしろ10年経ったいまだからこそリアリティが感じられます。表層的なところをセンセーショナルに書き綴っている書も多い中で、変化の底流をしっかりと見据えています。
とても一回では紹介しきれないので何回かに分けて紹介します。
今日は第1章から第2章にかけて紹介。内容で気になったところを抜き出しました。
○世界各地で広がる不平等(下記は主にアメリカでの話だが、現在と今後の日本を思わせる)
・アメリカの一人当たりのGDPは73年から95年まで36%増えたが、一般労働者の時間当たり賃金は14%減っている。
・80年代に所得の上位20%だけが勤労所得が増え、増えた所得の64%が上位1%に集中。
・勤労所得以外で見ると所得増の90%が上位1%に集中。
・1973年から実質賃金の減少が始まり、90年代にはあらゆる職業、学歴、年齢層で減少。
・若年層の実質賃金は最近20年で25%減。
→自分の親の代より、よくなる見込みがない。
・国は金持ちのために運営されていると答えた人が92年には80%。
・ダウンサイジングにより非正規労働者が増加(250万人が80年代後半から90年代初めにかけて解雇)。
・アメリカでは賃金の減少、ヨーロッパでは失業の増加(解雇が難しい)
→ヨーロッパは若年層が失業。学校を出た60%が職に就けない国も。
失業保険に多額の税金を費やす形で所得を分け合っている。
・日本は大量の社内失業者が発生している(とこの時点では評価されているが、現在はアメリカに近づいているのでは)
→収益性がないので、これはいつまでも続けられない。
・中間層をターゲットにした企業は経営が苦しくなり、高級店や安売り店が業績が好調。
・ただし所得の低い層の所得はさらに落ちていくので安売りもうかうかしていられない。
・経済的に勝利をつかんだのは高齢者。経済システムを動かしていくのは高齢者になると予言。
・不均衡がさらに拡大していけば、システムは崩壊する。
○資本主義の競争相手
・資本主義の敵(共産主義やファシズム)が消えると同時に資本主義の優位性が消えてしまったように見える。
資本主義は競争の重要さを訴えているが、資本主義自体に競争相手がいない
○変化を引き起こす底流
・われわれは地震や噴火などの目に見える異変が現れるまで地下での動きには気がつかないが、それらは着実に動いている。
・5つの誰にも止められない底流
①共産主義の終わり ②頭脳産業の時代 ③人口移動と高齢化 ④グローバル経済 ⑤覇権国家がない
・これらがさまざまな目に見える変化をおこしている。
次回から5つの大きな動きを紹介していきます。興味が沸いた方は図書館かアマゾンで探そう。
2009年8月6日木曜日
ブックレビュー 資本主義の未来
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