2009年10月17日土曜日

地方交付税の算定根拠2

前回の同名の記事では、基準財政基準額の積み上げの根拠となる要素を列挙しました。
今回はその要素の選定がどういう影響を及ぼしているかを見ます。

前回の記事でもわかるように、おおよそ人口に比例する指標が多くなっていますが、道路や港湾などについてはその施設の量に比例するものもあります。特に道路の延長は人口というよりもその市の面積に比例するので、一人当たりにすると面積が大きく、人口密度の低い市の方が財政需要が大きいと計算されることになります。
 道路については、実際に道路の量が多ければそれだけ行政需要が多くなるのは間違いがないですが、必要な道路については必要なだけお金が入るということになれば、本当に役立つのかとかいったことを考えなくなりがち、というマイナス面も考えられます。

 人口一人当たりの道路の延長は東京の1.86m、大阪の2.1mに対し、全国平均は9.3m、最大は島根県の24mと大きな差があります。

 また生活保護や社会福祉費(日野市では児童福祉と生活保護以外の福祉ですが、交付税の上では老人福祉と生活保護以外の福祉のようです。)は人口に単純に比例しており、実際の福祉の需要やサービスレベルとは関係なく定められているようです。
 特に生活保護の割合(平成18年度)は、大阪府の25.1‰(千人あたりの割合)から富山県の2.3‰まで10倍もの差があり、例えば同じ大阪でも大阪市は40‰を越すなど差があります。
 市の負担は全体の1/4とはいえ、保護率の高い市では基準財政需要額にカウントされない行政需要が多額に発生することとなります。

ブックレビュー 自治を担う議会改革

イマジン出版 自治を担う議会改革 江藤俊昭著

地方自治体(主に市町村レベル)の議会の今後についての本。
まず最初に地方分権により積極的な役割が求められているとしながらも、一方で市民参画や首長のマニフェストにより議会が蚊帳の外に置かれている現実を指摘しています。
三鷹市の事例として、基本構想策定のために「みたか市民プラン21会議」を設置し、公募住民375人により、分科会を含め300回以上の会議によって「みたか市民プラン21」が提案され、「市民が出した結論をその市民によって選ばれた議員が覆してよいのか」という命題が重くのりかかり、議会では反対できなかったという。議員は議会で議論できるゆえに市民参加に参加できず、市民参加の結果を受け入れるしかないというのである。しかも会議の主要メンバーには直前の市議会議員選挙で落選した候補者が並んでおり、「市長は選挙で当選したわれわれより落選した連中の意見を重視するのか」と不満続出だとか。

日野市も市民参画を盛んに進めているなか、他人事ではありません。

著者はこれに対し、今後の議会のあり方として、協働型議会を提案しています。
協働型議会は、行政の監視機能・政策立案機能(本中では監視型議会と書いてあるのですが、そういう形の議会が別にあるように読めてしまうので、あえて機能ということにしました)議会への住民参加を促し、市民社会の醸成を図る機能を持つことで、分権社会にふさわしい議会に改革すべしと提言しています。

具体的には、議会事務局の機能強化(議員との信頼関係構築など)、議会そのものへの住民参加の促進、議員同士が討議をする仕組み(市長への質疑だけではなく)などを提案しています。

その他、住民投票について、議員の在り方について、議員のマニフェストについても論を展開しています。
 特にP101の協働型議会の議員を考えるフローチャートは考え方が非常に整理されており、参考になります。議会に求められている役割の一つとして、公開の討論による政策や優先順位の決定があるものの、現実としては議論があまりないという現状があります。今後議員同士の討議を活発にしようと思った場合、討議可能な人数として、本会議を中心とするならば10人程度、委員会を中心とするならば6~10名×常任委員会の数が議員の定数として適当なのではないかという提言がなされています。

財政白書行脚 兵庫県1

久しぶりのほかの市の財政白書の紹介
 関西地方編の今日は兵庫県です。

○神戸市 決算パンフレット:神戸市の財政事情があります。
 市民向けにグラフを多く使うなど表現を工夫しています。
 平成19年度の決算と、経年的な状況、他の政令指定都市との比較がされています。
 全般的に大震災で受けたダメージ回復のために負った借金を必死で返している様子がうかがえます。
 (横浜市とならんで最もネットで借金を返している市です。)

○西宮市 財政の現状 平成20年度決算まで反映。
 財政課作成のおそらく庁内向け資料なのであまり噛み砕かれてはいませんが、平成5年からの経年のデータがあります。
 西宮市も神戸市と同様大きな震災による被害を受け、震災関連で1700億円もの(人口は48万人ぐらい)借金をしています。
 特に震災関係の影響について詳しい分析があります。

○豊岡市 
 財政白書ではないですが、経済産業白書があります。
 これがすごい!! なんと市の産業連関表があります。人口が10万人以下の市ではたぶんここぐらいでは・・・。正直驚きです。