今回は前回の続きです。 (前回はこちら)(目次はこちら)
財政白書の未来
第3回 財政白書の未来形
~ 財政白書は計画指向へ~
前回は白書の内容が総論から各論に重心を移していくというお話をしましたが、各論の分析を進めていくと、市民側の財政白書は分析から提言へ、行政側の財政白書は市民の参画による施策の策定を見据えるものへと進んでいくものと考えられます。
ところで、近年は施策の策定の段階から市民参画を行う市が多くなってきました。総合計画をはじめとして個別の○○プランというようなものの策定においても、市民を委員とするなど、計画段階から市民の声をいれようという取り組みが広がっています。
このような取り組みと各論を分析した財政白書作りが合わさることで、財政的なバックグランドについて共通のベースを持つ市民と行政が議論をし、財政的な裏づけを持った計画となることが期待されます。
財政的な裏づけのない計画はWishリストに過ぎません。各市町村で多くのプランが作られてきましたが、その中でどれぐらい財政的な裏づけを考慮していたでしょう。これまではプランを作っても
「いろいろとやりたいことはわかりました。計画にも載せました。でもお金がないからできませんごめんなさい。」で済ませているものも多かったのではないでしょうか。
やる可能性のあることを全て掲げておいて、将来なんでもできるようにしておこうという意図が場合によってはあるのかもしれません。
逆に財政の裏づけがあると、それは単なるWishリストからやるべき責任を持った市民に対する約束となります。行政にとっても市民にとってもこれまでのプランとは比較にならない重いものとなります。
もちろん歳入をはじめとして将来を見通しにくいものもあります。しかし計画と変わった場合に単に「お金がないので、ごめんなさい」ではなく「こういう理由で変化したので、このようにします」という説明がなされる方があるべき姿ではないでしょうか。
このような方向で進んでいくと、分析や検討が施策単位で行われることになり、財政白書という名前はふさわしくなくなっていくのかもしれません。今後そのようなものに何らか他の名称をつけていくことも考えるべきでしょう。
しかしながら、総論の分析である財政白書も個別の施策策定のための分析も
「市民と行政が」
「共通のデータに基づき」
「財政的な裏づけを持ちながら」
「議論を行うための基盤」
であることには変わりがありません。
今後は財政白書は、各論指向・計画指向を強めるなかで
”行政と市民が協働で施策を評価・計画するプラットフォームになる。”
と考えられます。 下にそのイメージを示してみました。
また参考までに、財政白書総論編からの進化の過程を次にまとめてみました。
現在は財政白書の総論作りがいろいろな市町村に広まっている段階ですが、既に(特に市民により)財政白書の発行が行われている市では、各論化が進んでいくでしょう。そしてそれを受けるような形で過去および現在の分析評価から、将来の計画作りへと広がっていくと考えられます。
当面は総論づくりの広がりと各論への深化が進むと考えられますが、次回以降述べることにより、ある程度総論づくりが広がった段階で各論の深化が加速度的に広さと深さをもってくると考えています。
とはいえ、このようなことが実現していくには実際には相当の時間を要するものと思われます。
これは将来のひとつの理想形ですが、実現にはいくつものハードルがあります。
次回以降そのハードルのうち 市民による財政分析に係わる課題、コミュニケーションに係わる課題につき、そのハードルを乗り越える動きについての展望を述べていきます。
次回は第4回「市民による財政分析の未来」をお送りします。
このペースでいくと何回かにわけることになるかな。今回も長かったし。