2009年8月11日火曜日

ブックレビュー 資本主義の未来その2

今回は前回の続き、資本主義の未来に大きな影響を及ぼしつつある大きな底流を紹介していきます。
本書でいうと第3章と第4章の内容を紹介します。
 きっちりまとめたものではなく、気になったところ。ポイントを要約抜き出しているのでご容赦。

1 共産主義の崩壊
 ・共産主義の崩壊で19億人が資本主義の世界に流れ込み、ものすごい供給が生じた。
  ・160万トンのアルミ地金が旧ソ連から流れ、いたるところでアルミ精錬所が閉鎖された。
  ・羊毛の輸出量が900万トンから18600万トンに増え、羊毛価格が1/4に。
 ・東ヨーロッパの製品が西ヨーロッパに流れ込んで工場が閉鎖されるか、さもなければ何百万人が西ヨーロッパに移民してくる。
 ・共産主義では学校制度は優れていた。旧共産圏でアメリカの平均的な高校生以上の学力を持つ人数はほぼ無限。
 ・教育程度の高い中国人を月35ドルで雇えるときにアメリカの高卒者に年2万ドルを払えるか。
  →資本主義社会の賃金水準に大きな影響を与える。

 なお中国についてはかなりページを割いている
 ・最近20年の成長はこれまでの非効率の反動。共産主義で無料に抑えられていた住宅価格が市場価格になれば、中国の労働力は現在ほど安くなくなる。
 ・農村への投資が社会の安定に欠かせないが、それは経済成長鈍化の要因となる。
 ・中国が成長している理由として4つあげている
  ①貯蓄率が高い(通貨危機のようなものが起こりにくい)
  ②しっかりした政府がある。
    東ヨーロッパでは政府が崩壊。無秩序の民営化(旧共産党幹部による公共財産の略奪)が起こった。
  ③資本主義の中で育った華僑とのつながりがある。
  ④国営企業の割合が少ない(全体の18%、ソ連は93%)
   小規模経営の人民公社の割合が多い。

 旧共産圏のほか、今後輸出ゲームに加わろうとしている第三世界の人口が30億人になる。

2 頭脳産業の時代
 ・日本の旧通産省が21世紀にかけて成長する産業のリストが紹介されている。
  →マイクロエレクトロニクス、バイオテクノロジー、新素材、通信、民間航空機、工作機械・ロボット、コンピュータ
 ・これらは人間主体の頭脳産業であり、「地球上のどこにでも立地可能」
 ・生産コストが一番低い国に生産拠点は移動。新しい技術は発明されたところで使われるとは限らない。
  (アメリカが発明したビデオやファックスは日本で作られていると書いている。)
 ・発明からサービスまでのプロセスを組織できるか。これからは高度な技能や新しい技能が必要であり、さらにそれが組織化される必要がある。
 ・技能と知識に関する国の投資が必要。教育や研修は時間がかかる。頭脳産業の立地に大きな影響を与えるのは多国籍企業の意向。教育や研修への投資により頭脳産業の進化の過程に参加しなければ発展への道は閉ざされる。
 ・第三世界の技能しか持たないものは、先進国に住んでいても第三世界の賃金しかもらえなくなる。
 
 ・経済はダイナミックな不均衡の中にあり、経済全体はプラスであっても、部分的には損する人がかなり多く出る。勝者の利益をどのように分配するかは以前より厄介な問題になっている。

 ・一方でテレビが社会の価値観と規範の決定に大きな影響を及ぼすようになっている。
 ・テレビを見る場合には学ぶ必要はない。ボキャブラリーが貧困になってしまった。
  (リンカーンのゲティスバークでの演説など今日では考えられないとしているが、オバマ大統領の存在を考えるとまだ捨てたものではないのかもしれない。アメリカの方は。)
 ・テレビ文化では現実と思ったことの方が現実そのものよりも重みを持つ。殺人事件が頻繁に報道されるため、ほとんどの人は殺人が恐ろしいほど増えていると思い込んでいる。(今の日本もそういえる)
 ・カリフォルニア州では1994年に三回重罪を犯したら終身刑という法律ができ、大学の予算を減らして刑務所の予算を増やした。95年には州の刑務所予算は大学予算の2倍となり、刑務所一人当たりの支出が大学一人当たりの4倍になった。
 ・テレビでは消費が人生の唯一の目的となり、個人的な充足感だけが目指すべき目標となっている。
 ・テレビドラマの家族はアメリカの平均的家庭より4倍豊か。(日本のトレンディドラマ~死語だが~でも都心のやたら立派な住まいにすんでいるような想定になっているのと似ているかも)
 ・資本主義文化とテレビ文化はともに金儲けに熱心な点では一致するが、一方は将来のことを少しは考えなければいけないが、もう一方はそのようなものに価値を認めない。

次回は人口の変動について。