経常収支比率その6です。一応最終回
今回は2つの経常収支比率。
経常収支比率には実は2つ種類があります。
一つは減税補てん債や臨時財政対策債を経常一般財源(つまり分母)に含めないもの
もう一つは含めたもの。
減税補てん債とは、景気対策のための特別減税により税収が減少したことを補てんする借金のこと。
臨時財政対策債とは、地方交付税を交付するために不足する分の1/2をそれぞれの市が(残りの1/2は国が借金で補てん)借金してよいというもの。
(その意味あいなど、詳しいことはこちらのコラム参照)
現在は普通に「経常収支比率」というと臨時財政対策債などを分母に含めたものを指します。
しかしややこしいことに、平成12年までは逆に分母に含めないものを普通の「経常収支比率」と呼んでいました。
この2つの経常収支比率の意味合いと将来への経常収支比率への影響を調べてみましょう。
○そもそもどうして「経常一般財源」なのか?
原則的な考え方からすれば、公債費は「経常」的なものではありませんが、
減税補てん債が「本来であれば地方税収になっていたであろう部分」を補てんするものであること。
臨時財政対策債が「本来であれば地方交付税になっていたであろう部分」を補てんするものであること。
から、それぞれ「地方税」「地方交付税」と同じ性質を持つものと想定したからであろうと思われます。
○後々どうなるのだろう
臨時財政対策債もやっぱり借金ですから返さなければなりません。
臨時財政対策債の利子と元金は地方交付税を計算する際の基準財政需要額に入ります。
具体的にこれによりどのようなことがおこるかというと、仮に基準財政需要額100億円、基準財政収入額80億円の市があったとします。仮に臨時財政対策債の返済が各年1億円あるとすると、基準財政需要額が101億円に増えますので、地方交付税も1億円増え、21億円になります。
これを経常収支比率の目でみると、分母である経常一般財源も分子である経常経費充当一般財源も同じ額だけ増えるので、経常収支比率にはほとんど影響を及ぼしません。
一方、基準財政需要額100億円、基準財政収入額120億円の市では、臨時財政対策債の返済により基準財政需要額が101億円に増えても地方交付税額は0のままなので、分子となる借金の返済額だけがカウントされることになり、経常収支は悪化することになります。
ということで
~ 臨時財政対策債は、地方交付税の交付団体の経常収支比率にはほとんど影響を及ぼさない。
不交付団体は比率が悪化する方向で働く
というのが結論になります。とはいえ、地方交付税を減らそうという動きの中、現在交付団体であるものが将来とも交付団体である保証はないので、注意が必要かと思います。
経常収支比率については本稿で一旦締めです。歳入はともかく歳出については具体的にどれが分子に関係するのか確定できなかったので、後半は歯切れが悪い内容になってしまったかもしれません。
経常収支比率は少なくとも分母の方は法人市民税を含むため「経常」という言葉の印象とは違う実態があり、毎年の数値で一喜一憂すべきものではないとは思いますが、現在のところ財政の硬直化を見る指標としてはこれ以上のものはないのが現状なので、実態を理解したうえで、財政白書の方を見ていただければと思います。
今後は施策と経常収支比率との関係については、トピックスなどとの対応で適宜取り上げていこうと考えています。