2009年5月7日木曜日
お勧め財政白書 その7
前回までは財政用語等の説明でしたが、今回からは分析の方法や視点で面白いと思ったものを取り上げます。
○昭島市H18年度版 P8
基金の繰入と赤字公債を同時に示してあります。 簡単にいえば一方は貯金の取り崩し、もうひとつは借金なので、単年度で見た場合の資金不足を表す考え方として面白いと思いました。
○小平市H19年度版 P55~ (PDFファイル)
小平市は平成19年度版の前には平成14年度版を出していますが、55ページ以下で5年前の財政白書で示した小平市の課題について、その5年間にどうなったかをまとめています。PDCAサイクル的考え方として参考になります。また5年後を期待します。
○西東京市平成19年度版 P33~
26市の平均や都内類似団体とと比べたレーダーチャート。総務省のレーダーチャートとも違います。
ちなみに、財政力指数、経常収支比率、公債費比率、一人当たり市債残高、一人当たり基金残高、人件費比率。
総務省バージョンは公債費比率の代わり実質公債費比率。人件費率に代わりラスパイレス指数。基金残高がなく、1000人当たり職員数と、一人当たり人件費・物件費等決算額が加わっています。
またP41には「債務償還可能年限」という指数が紹介されています。その市が債務を何年間で返済できるかという指標で、これが市債の償還年限を下回っているかどうかで中長期的な継続可能性を判断するのだそうです。
面白い指標と思いますが、市民が独自に算出するのは難しそう。
同じく西東京市 平成17年版 P26~
総合計画の実現にいくらかかるかを試算しています。大変なお金がかかることが示されていますが、これは総合計画を作成する際に試算すべきものでは。 と思いました。いろいろ不確定要素があって難しいでしょうが、日野市もまた新しい総合計画を立てる時期ですが、是非考慮していただきたいものです。
○青梅市 平成19年度版 P7~
一般会計から特別会計への繰入と収益事業からの繰入が並べてあります。
収益事業から特別会計へ資金を支援していたものが、収益の減少に伴い、一般会計から出さざるを得なくなった事情が見えます。同じことが他の市に当てはまるかどうかは不明ですが、大規模に収益事業をやっている市の分析としては参考になるかと思います。
2009年5月6日水曜日
日野市と財政10年の歩み その2
○事業所
平成11年7月1日
数4713
従業者54996
平成18年10月1日
数4692
従業者58,706
○農業
平成12年2月1日
耕地面積 田3543a、畑 9262a 、樹園2919a
平成17年2月1日
耕地面積 田2034a、畑 6228a、樹園 2767a
~田んぼや畑から住宅地などに変わったことがわかります。
○工場 (従業員4人以上)
平成10年12月31日
事業所数151
従業者数17885人
製品出荷7425億円
平成18年12月31日
事業所数111
従業者数15,643人
製品出荷額 10343億円
~従業者数は減っていますが、輸送機(主に自動車)関係が伸びた(約2500億円)ため出荷額は増えています。
平成20年度21年度はまったく違った数字が出ると思われますが。
○商業
平成11年7月1日
商店数卸売 206、小売933
従業者卸売 1406人 小売6981人
販売額卸売1029億円 小売993億円
売り場面積74556㎡
平成16年6月1日
商店数卸売 173、小売826
従業者卸売 1127人 小売6659人
販売額卸売1063億円 小売923億円
売り場面積87,716㎡
売り場面積は増えているが、従業員、店舗数、売上は減少。
実はこれは東京都内全般の傾向です。
○昼間人口
平成12年144,265 → 平成17年147,936
流入人口
平成12年41,113 → 平成17年40,377
流出人口
平成12年64,781 → 平成17年62,790
昼間人口は増えていますが、流入人口・流出人口とも減っています。
16歳~60歳ぐらいの年齢層が減ったことにより、市内外の移動が減ったためと推察されます。
なお資料 東京都HPからいただきました。
日野市は財政の資料は充実しているのですが、全般的な統計情報はちょっと残念です。
2009年5月5日火曜日
日進市財政白書
日進市は平成16年度決算版から財政白書と「にっしんの財政事情」発行、平成18年度決算が最新です。
財政白書は、基本的なことはすでに理解されていることを前提に要点をまとめています。
経常収支比率など指標の説明はかなりわかりやすいです。
http://www.city.nisshin.lg.jp/seisaku/zaiseiindex/zaisei_hakusho.html
これとは別に「にっしんの財政事情(イラスト付)」もあり、これはまったく財政のことを知らない人にも親しみやすいようにしたもの。予算の決まり方についての説明は面白いので、特にお勧めです。
http://www.city.nisshin.lg.jp/seisaku/zaiseiindex/zaisei_jijou.html
それにしても驚くのが日進市の財政事情のよさ。財政力指数が1.25。経常収支比率も70%台です。
名古屋の隣の市だし、きっと法人税収がすごいのだろうと思ったら、一人当たりの法人税収は日野市とあまり変わらない。市税収入も市民一人当たりにすると日野市とほとんど同じでした。
一方支出を見てみると一人当たり15%ぐらい少ないようです。人件費が少ないのと、民生費が非常に少ないのが特徴。一人当たりにすると民生費は日野市の6~7割ぐらいでした。福祉の水準が日野と大幅に違うのかどうかということまではわかりませんでしたが、気になります。
一人当たりの国保の保険税額が約1.6倍というのも驚き。保険税額は法律でほぼ決まっていると思うので、国保対象者で豊かな人が多いのでしょうか。
他の市との比較はすぐにできるのですが、「なぜ?」ということになると簡単にはわからないものです。
2009年5月4日月曜日
財政健全化法を勉強する その6
勉強しながらのコラムにつき、説明不足、わかりにくい点ご容赦ください。
細かい指標やイエローカードの場合の手続きなど細かい点は、総務省のページ等を参考にしていただければと思います。
この制度は始まったばかりであり、行政活動への影響は未知数です。都下の自治体ではイエローカードにかかりそうなところはなさそうなので、直接的にどうというより、議会や市民の参画のひとつのきっかけになればと思っています。
(といいつつ、個々の健全化指標自体のチェックはしづらいと感じますが。)
財政健全化法に関する課題として、類書を斜め読みすると以下のことが指摘されているようです。
○公共サービス低下の懸念
・公営企業ごとに資金不足をチェックすると、公共が事業から撤退してしまい、サービスの供給者がいなくなるのではないか。
→これに対しては、事業の性質上計画的に出てくる赤字でやむをえないものを、「解消可能資金不足額」として資金不足額に算入しないことにするという配慮がなされています。が、この配慮に対してもう一方からは「解消可能資金不足額」に恣意性が入る余地があり、無用な延命になるのではないかという懸念を表明されています。 うーん、難しい。
○公会計制度との関連
・フローだけではなくストック情報もというが、公会計自体がストック情報を扱うように整備されていない。
→第4回でのコメントのように、将来負担比率にはいろいろな性質の債務が一緒くたになっているという問題があります。実は偶発的な債務や資産の評価損は企業会計基準においても議論があるところであり、もともと難しい分野です。だからといってそんな指標は意味がないというのではなく、さらによい指標になるようブラッシュアップしていくべきなのだろうと思います。(総務省の都合でしょっちゅう変わるようでは問題ですが。)
○そもそも論
・財政悪化の原因は国の政策に負うところが多いのになぜ地方が責任を取るのか。
・国で画一的な基準を決め、国が監視・管理をするのは地方自治の原則に反する。
というところかと思います。
個人的には、イエローカードを食らうボーダーラインの設定が、国の監視の目が行き届く範囲の数に収まるように設定されるようなので(前々回コラム参照)、かなり財政状況が悪化している自治体のみがエローカード(財政健全化団体)となると思われます。しかしそのような背景を知らない市民から見れば「基準値を超えていない=財政は健全」と思ってしまわないか。そのために、行政健全化の努力がそがれてしまわないかという点を心配します。
また総務省の研究会では破綻法制(債務の減免)などについても議論されたようですが、財政健全化法では債務の減免が行われることは前提としていません。
話は民間の倒産に戻りますが、倒産(破産)の意義付けとしては以下のように言われているようです。
1.個人の再生。事業の失敗など一度の失敗により一生を棒に振るのではなく、債務を軽くして再チャレンジできるようにすること。
2.事業価値の保全。債権者が借金のかたに、その会社の資産を個別に換金してしまうと、土地や建物、機械、社員が一体となって経済的な価値を有していたものが、価値が毀損してしまい、社会的な損失が生じることから、それを防止するため。
3.不適切な経営者の退場。倒産により社会の資源を有効に使えない経営者の退場を促し、社会全体としての経営資源の有効活用に役立てるため。
夕張市のケースを個人に当てはめると、一生かかっても返しきれない借金を背負って食べるものも減らして、寝る時間も減らして働かされているように見えます。個人であれば破産をして、債務の免除を図ることでしょう。自治体財政は家計と似ている*1ということを考えると、いったん破産して再出発をするのがよいように思います。(とはいえ、先進国ではアメリカ以外に自治体の破産を想定している国はありませんが。)
債務の減免が許されなかった理由を私なりに考えてみました。(あくまで個人的な見解にすぎません。)
債務の減免には2つのやり方があると思います。ひとつは貸し手責任ということで、金融機関に債務の減免を求めること。もうひとつは国が面倒を見ること。
前者(金融機関が負担)を仮に実施したとすると、「次はあの町か」ということになり、財政状態の悪い町が資金繰りができない又は、金利がやたらに高くなってしまう。というようなことが起こると想定されます。おそらく大都市の地方債や国債の信頼にまで波及することが予想されます。そうなると債券の価格が下がって破綻する銀行が出るかもしれません。低金利で何とか持っていた国の財政が破綻することもあるでしょう。
おそらくそのようなリスクは国としては取れないと思われます。
それでは後者(国が負担)の場合はどうでしょうか。ひとつはモラルハザードの問題があります。最後には面倒を見てくれると思えば、苦しい思いをして財政をよくしようという試みは萎えてしまいます。また自主的な再建をあきらめて国になきつく町も相当出てくるのではと思われます。 ということでこれも国としてはやりにくいということになります。
という状態の中、夕張市は金融機関にも国にも助けてもらえず、体力を失いながらも返せない借金を返そうとしているというような状態に陥っているようにも見えます。 あるいはこのような状況が全国に報道されることで「財政が悪くなるとこうなるんだぞ」と国が脅しをかけているのかもしれませんが。
今回で一応最終回です。最後は明るい展望の話でなく申し訳なし。
財政健全化法の本格的な運用は平成21年度からです。関連する動きについては、目先のセンセーショナルなものに惑わされず、じっくり注視していきたいと思います。
*1 自治体の財政は家計に似ている。: 営利企業は利益の最大化を主な目的としています。一方個人(家計)は家族の幸福の最大化を目的としているといえるでしょう。 それでは自治体はどうか?となると考え方としては家計の方に近いのではないかと、つまり自治体の構成員(企業を含む)の効用(平たく言えば幸せ度合い)を最大化することを主な目的としているといえるのではないかと。 という意味でのこのフレーズです。
ところで、利益の最大化にしても、幸福の最大化にしても、長期的な視点と短期的な視点があります。四半期ごとの利益の最大化が長期的な利益の最大化に直接結びつかないように、短期的な幸福の最大化と長期的な幸福の最大化は違います。
家計ではできる長期的な幸福の考え方が、多人数多様な利害関係者から成り立つ自治体(国全体がそうだともいえよう)においてはできていないのではないかと。市の財政を自分の家計のように思って考える人を少しでも増えればよいなと思います。
語句の説明にしては長くなりすぎましたな。
2009年5月3日日曜日
お勧め財政白書 その6
お勧め財政白書 その6
財政用語 より詳しい人向け
今回は、財政用語に関連してより詳しいことを知りたい方のためのリンク集です。
○財政指標
標準財政規模について、立川市行財政白書平成17年度決算版(PDF)のP91に詳しい算式あり。その他経常収支比率などの計算式があります。
財政健全化法の指標について 小平市の財政白書(PDF) P50~ が算式が細かく載っています。(用語は難しいですが。) また 実質公債比比率の説明については東村山市の平成18年度決算版(PDF)のP42が詳しい。起債制限比率との違いの説明もあります。
財務諸表について
キャッシュフロー計算書については 三鷹市の自治体経営白書第五章(PDF)P175以下が詳しい。
赤字公債について
地方財政法第5条で原則として認められていない赤字公債(減税補てん債など)の説明が多摩市の行財政診断白書で説明されています。(書かれた年代が古いためか臨時財政対策債の説明はありません。) このページ の下のほうに記載があります。
2009年5月2日土曜日
和光市松本議員のブログ
http://ameblo.jp/takeyan/entry-10242334883.html
5月に市長選に出られるとのこと。
キーワードは「子どもにつけを残さない」ということで、まさに財政を考える会の趣旨と一致するところです。
議員でありながら、経営書などのエディター・ライターとしても活躍されているので、ブログ・マニュフェストも参考になりますので、こちらで。
http://ameblo.jp/takeyan/
是非とも当選してますますの活躍をされることを願っています。
財政健全化法を勉強する その5
財政白書を勉強するその5
前回は新しい財政健全化法による評価指標を紹介しました。
今回はその指標の判断基準です。
評価指標は次の5つ
①実質赤字比率
②連結財政赤字比率
③実質公債費比率
④将来負担比率
α公益事業の資金不足比率
でした。
この①~④のうちひとつでも財政健全化基準(いわゆるイエローカードの基準)を超えると、自主的な改善努力による財政健全化を求められます。 このように早期に財政悪化状態を見つけ出し、是正を図ろうというのが新しい財政健全化法の一つのポイントです。
それでは、その指標はどれぐらいかということですが、市町村の財政規模によって幅があります。
①は11.25~15%
②は16.25~25%
③は25%
④は350%
αは20% となっています。
また①~③については財政再生基準を超えると国などの関与による確実な再生が行われる段階となります。
①は20%(旧財政再建法どおり)
②は30%
③は35%
④はありません。(この指標がいくら高くても財政再建団体にはならない)
αについても同様。
ところで、新しい財政再建法は夕張市の財政破綻を踏まえたものであるということですが、この指標があれば夕張の財政状況を見抜くことはできたのでしょうか?
財政破綻前の平成15年の夕張の決算カードを見ても、残念ながら普通会計以外の指標が不明なので、チェックできたかどうかは判断できません。この点のチェックが指標や基準などの作成の際に行われたか知りたいところです。
第6回はこちら。
