2009年4月29日水曜日

財政健全化法を勉強する その4

今回は新しい財政健全化法(正式名称 地方公共団体の財政の健全化に関する法律)についてです。

 前回は、古い財政再建法が抱えていた課題の反省に基づき、次の点を定めたことを説明しました。

 ・公営企業を含めた財政情報の開示

 ・フロー(実質収支)以外にストック(借金の負担など)を含めた評価指標の開示

 ・イエローカードの基準を定めることで早期発見、早期健全化を図る

 今回は、新しい法律による評価指標について説明します。

 評価指標自体の算定方法は、実務上はかなり細かいので厳密に知りたい方は次のHPの「健全化法関係資料」の「基本資料」から「財政指標(pdf)」を見ていただければと思います。

http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/index.html

 このページではそれぞれの指標の趣旨とイメージ、そのほかコメントを記しました。

   財政指標は4つ+α。①実質赤字比率 ②連結実質赤字比率 ③実質公債費比率 ④将来負担比率
  と公営事業の資金不足比率。です。

 ①実質赤字比率
  ・第2回の終わりのほうで説明した実質収支比率と同じもの。
  ・家計でいえばその年の赤字のその年の給与対する割合と考えればよいでしょう。

 ②連結実質赤字比率
  ・特別会計を含めた実質赤字比率。
  ・家計でいえば、自分の事業を会社としている場合の会社の赤字を含んだものというイメージでしょうか。
  ・「連結」というと関係するところが全て含まれるというイメージがありますが、含まれるのは各種特別会計と公営企業までで、一部事務組合や第三セクターなどは含まれません。
  ・日野市でいうと、一般会計と特別会計(国民健康保険、区画整理、下水道、介護保険、後期高齢者医療、受託水道)及び公益企業である日野市立病院が含まれます。
  ・含まれないのは、土地開発公社、企業公社、一部事務組合*1です。

 ③実質公債費比率
  ・普通会計が負担する借金の返済(利子と元本)の標準財政規模に対する割合。
  ・家計で言えばローンの支払額(主宰する会社の借金等含む)の、その年の給与に対する割合と考えればよいでしょう。
  ・実質公債費比率の算定では、②で計算の対象となった特別会計と公営企業に加え、一部事務組合分も対象となっています。

 ④将来負担比率
  ・一般会計が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する割合。
   将来負担すべき実質的な債務には、③で計算の対象となった特別会計や公営企業、一部事務組合の借り入れに加え、債務負担行為*2による支出予定額、第三セクターの損失補償額なども含まれます。
  ・家計で言えば、ローンの残高の年収に対する割合といえるでしょう。(貯金がある場合には相殺)
   ただし主宰する会社の借金や友人との共同事業による借金負担分、連帯保証の保証債務なども含むようなかんじです。
  ・①~③がフロー指標であったのに対し、この指標だけが唯一ストック指標です。
  ・そもそも公会計についてはフローの情報しかなく、ストック情報の整備がなされていないこと(企業でいえばバランスシートを作る基準があやふやな状態)、将来負担の中には確実に払うべきものと、未確定のもの、債務保証のような偶発的なものが混じっていること。  などから、課題が多い指標といわれているようです。

+α 資金不足比率
 ・地方公営企業(下水道や病院など)の実質赤字比率(①と基本的には同じ)。
  これは、個別の公営企業ごとに求める(合計しない)もののようです。

 今日は説明が長くなってしまったのでここまで。
 第5回はこちら

*1一部事務組合
複数の市町村がまとまって一部の行政サービス(例えば病院や火葬場、ゴミ処理場)を行うために組織する組合。日野市の場合は競輪、競艇、斎場、後期高齢者医療など7つの一部事務組合に加盟しています。
 一部事務組合で建物を建てる場合、事務組合で借金をしますが、利用者負担でまかなえない分は基本的には組合に加盟する市からの繰入金などでまかなうことになるため、将来の市の負担として上記③④の指標に反映されることとなります。

*2債務負担行為
債務負担行為とは、区画整理など事業に長期間を要するものの事業費の確保に備える等のために、翌年以降の支出の予定額と期間をあらかじめ定めておくものです。これは将来とはいえお金が出て行くことを予告するものになるので、議会の承認が必要です。家計でいえば、自動車の買換や住宅の購入、子どもの将来の学費を予定しておくようなものでしょうか。
一言で債務負担行為といっても、割賦払いのようなもの(クレジットカードの30回払いのようなもの)や債務保証(子供の借金の保証のようなもの)、単に将来の事業の予定(子供の学費の予定)などいろいろな性質のものがあります。

(なお本稿の作成に当たっては「自治体財政健全化のしくみ(ぎょうせい)」「総務省HP」をベースとしました。)

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