2009年3月1日日曜日
日野市中央公民館 財政講座 2回目
前回の続きで、今日は日野市の財政運営について議論 ということだったのですが・・・・。
参加者4人(T_T)。 これはへこみましたねぇ。 それでもこちらの期待以上のことをやっていただいた方もいらっしゃいました。講座の趣旨が伝わっていなかったこともあったようです。
ちょっと課題のハードルが2回の講座の中でやるには高すぎたようです。
日本でもはじめてぐらいの試みなので、あまり気にせず、もし次があるようであればこの経験を生かしていきたいと思います。
今後資料が財政を考える会のホームページからアップされる予定ですので、アップされたらまたお知らせします。
2009年2月28日土曜日
長野県下條村
『長野県下條村、出生率「2.04」の必然』
日経ビジネスオンラインで非常に興味深い記事があったので、概要を紹介します。
http://business.nikkeibp.co.jp/
登録制なのですが、無料です。別に宣伝ではないですが、興味がわきましたら登録して読まれるとよいと思います。
○概要:長野県南部の下條村は出生率を向上させたことで全国的に知られる村。合計特殊出生率が2.04(全国1.34)
その村の20年を紹介した記事。面白いと思った部分を取り上げてみます。
「子供の声を聞くと、年寄りの背中がピシっと伸びる。子供を増やすのが最大の高齢化対策だな」。下條村の村長、伊藤喜平氏はそう言って相好を崩した。 」 ~ 少子化対策は高齢化対策
「村民増」の第一歩は行財政改革。として、国や県が推進する農業集落排水処理施設の建設をあえてしなかった。
試算するとコストは約45億円、補助金が出るし地方債も発行できる、その元利払いは交付税で面倒をみてもらえる。だけどもその後30年間、借金の返済と運営で1.7億円必要になる。人件費も1.6億円かかる。
→全戸に合併処理浄化槽を設置すれば約6億3000万円しかかからない。村の負担金は2億2000万円で済み、単年度で処理できる。
~ 国や県のいうことを無批判に聞かず、よく検討した結果3億円もの資金が。
「生活道路は住民が作る!簡単に言うと、砂利やコンクリートなどの材料費は村で負担するから自分たちで道路を造ってくれ、という制度。この事業で造られた道路や水路は今や1000カ所以上。下條村を車で走ると、手書きの「年月日」が刻印された白い道が至る所で目に入る。 この道路造りは別の効果をもたらした。地域のコミュニティーが活性化したのだ。「共同でやる作業はだんだんと減っていたが、皆が共通の目標を持つことで、集落の活動が盛んになったね」
「既に子供を持つ、もしくは今後、子供をつくる気がある若い夫婦に定住してもらおうと、村が賃貸マンションを建てた。が最初に国の補助金を入れたら大失敗。いろいろな縛りがあって入居者を抽選で決めたが、抽選で入居したある家族は地域活動に一切参加せず、住民と摩擦を起こした。さらに、家賃まで滞納するようになった。2棟目以降、すべて村の自主財源で建てることに決めた。カネはかかるが、村が望む人々を選ぶことができると考えた。
~ 国の制度のゆえによいものができないという事例。
地方自立政策研究所役割分担明確化研究会が著した『地方自治 自立へのシナリオ』(東洋経済新報社)には興味深い例が出ている。「特殊教育設備整備費補助金」という国の補助金。実際の補助金額は13万6000円だが、事務コストを試算してみると、15万9000円がかかっていた。実際の補助金よりも事務コストの方が高いとはどういうことなのか。これは極端としても、補助金のかなりの部分が事務コストに消えているのは間違いない。
霞が関の政策よりも、人口4000人の村が財布をやりくりして打った政策の方が出生率の向上に寄与している。
地域のニーズを知っているのは住民に身近な市町村だ。出生率を上げた下條村を見ても分かるように、住民の生活に直結したサービスに関して言えば、少なくとも市町村の方がカネをうまく使う。これは子育てだけの話ではない。
~ 下條村が国の制度に縛られずできたのも、合理的な投資で財政がよくなったから。そういう意味でも健全財政の重要さを感じた記事でした。
2009年2月27日金曜日
町田市レンタル方式で保育園整備
読売新聞 2/23日
「町田市レンタル方式で保育園整備」
町田市は新年度から、保育所に入れない待機児童を減らすため、土地所有者に保育所を建ててもらい、運営は社会福祉法人に委託するというユニークな事業を実施する。原則的に契約は20年間とし、終了後は所有者に返還する。この方式は介護施設の建設促進策として採用されているが、「保育所建設では、全国初のケース」(石阪丈一市長)という。
市によると、土地所有者に建設費の一部として3000万円を助成するとともに、法人に年間1100万円(上限)の土地・建物賃料を20年間補助する。これで、土地所有者は市の補助金と賃料で建設費をまかなう一方、少子化社会の中で法人は低リスクで保育所を運営できることになる。
昨年4月現在、市内に待機児童は234人いる。既存の国庫補助制度では開設までに時間がかかるため、レンタル方式とした。新年度に定員100人の保育所3棟の建設を予定し、2010年4月の開所を目指す。
参考になるケースですが、いままでなかったというのが逆に驚きですね。
このケースだと国庫補助がないからでしょうか。
2009年2月26日木曜日
連載:財政白書の未来 第8回
第八回 財政分析の担い手
~組織化と担い手の課題~
これまで、市民がデータに基づき分析をし・・・云々と書いてきましたが、実際にはその市民は誰なのでしょうか。
担い手となる市民の条件としては①市の財政に興味を持っていること ②データを収集し、分析し、評価する気力があること ③時間がある程度自由になること の3つが上げられるでしょう。そして実際に財政分析に携わるのは、上の条件に当てはまる人の中で他のことに優先して取り組むだけの動機付けと始めるきっかけがあった場合に限られると思われます。
上記の条件を満たす市民の存在密度は低く、人口の0.01%~0.1%程度と見ています。(特に根拠のない筆者の勘です)したがって、単に個々人が興味を持っている・能力も時間もあるというところを超えて、市民が集まって実際に白書をまとめるというようなアクションに至るまでには、これらの人の組織化ということが必要になります。
組織化のためには人が集まる必要がありますが、そのきっかけとしては下記のパターンがあるようです。
(なお下記のパターン類型は筆者が新聞やネット情報から推測したものです。)
1.公民館などの財政講座の受講生が自主的に組織を作った場合
・多摩の多くの市がこのパターンを取っていることが多いようです。特に何回か連続した講座の場合に効果が大きいようです。単発の講座の場合には、議員さんなどが興味を示す例が多いですが、なかなかその後が続かないことも多いようです。
2.行政が総合計画策定などのため市民を集めた中から、組織化された場合
・日野市の健全財政を考える会はこのパターンでできた会を源流に持ちます
3.特定の団体の後押しにより白書が作られた場合
・職員組合が支援するNPO法人が財政を含む自治体白書をかなり早い時期に作成していました。
4.一定の事業に反対するあるいは疑問を持つ市民によるもの
・松本市の例がそのようです。単に疑問を持つ市民がいるだけではだめで、市民をまとめる核となるリーダーの存在が不可欠です。
5.もともとの地縁・人のつながりをベースとしたもの
・鎌ヶ谷市の学生のプロジェクト「ザイバク」がそれに当たるでしょう。これは同じ地域出身というつながりからスタートしているものです。
今後出てくる可能性のあるパターンとしては
6.議員や政党の支援によるもの
・不思議と議員の勉強会などから出てくるものは少ないようです。現状は無党派層が多いので、政治色を嫌う人も少なからずいるので、わからないようにしているだけなのかもしれません。個人的には党や会派や幹部の意向だけではなく、自分で研究・分析して情報発信をする議員が増えることを期待するのですが。
7.ネット上での呼びかけによるもの
・最初に書いた①~③の条件に合う人をネット上で同じ自治体の中で組織するのは実際的には非常に困難でしょう。ただし、日本国レベルや東京都大阪府など巨大自治体レベルであれば、可能なのかもしれません。とりまとめとリーダーシップが大変そうですが。
財政白書の担い手の面での大きな課題は、現状では担い手がどうしても高齢者に偏りがちという点ではないでしょうか。時間があるという面では、学生もその中に入るのでしょうが私が知る限り他に事例はないようです。鎌ヶ谷が大きく取り上げられているのはそれだけレアなケースであることもまた確かだからでしょう。
担い手の裾野を広げるにはまず働き盛り世代が忙しすぎるというワークライフバランスの問題がありますが、そういう人たちが参加しやすい環境を整えることが必要であると思います。
財政白書の進化に伴い、モジュール化、ネットワーク化した場合の担い手像については、正直なところまだイメージが十分に浮かんでいません。 これについて考察が進みましたら別途コラムで紹介したいと思います。
次回は財政白書とコミュニケーションをお送りします。
2009年2月25日水曜日
連載:財政白書の未来 第7回
第7回は、情報発信の未来の続きです。(前回はこちら)(目次はこちら)
第七回 情報発信の未来 その2 ~白書の動画化~
市民からの情報発信の今後の一つの形として、動画による情報発信がされる可能性があります。
近年はYouTubeやニコニコ動画など、自分がとったムービーをネット上で公開できる仕組みができ、財政分析をした結果や意見を発表する方法として、手軽なものになりつつあります。
動画のメリットとしては
①(少なくとも当面は)話題性がある
②(通常のIT環境さえあれば)ハードルが低い
③(映像の作り方によっては)訴求力が高い
④(ビデオを撮るだけならば)コストが低い
ということがあげられます。
特に③の訴求力を活かし個別の施策に係わる提言をする際には、動画が大きなインパクトを与えられる可能性があります。
上記のようなメリットがあるとはいえ、ニコニコ動画で200万以上(2009年2月現在)、YOUTUBEは4000万以上(2007年1月現在)の数の動画があり、ホームページ上の白書と同様埋もれてしまう可能性は高く、見てもらうためにはなんらかの戦略が必要となります。
一方、個々の施策について、特にゴミ処理場など多くの市民の耳目を集め、議論を巻き起こすようなものに関しては、市民に対して理解を得るために、行政の側が動画によるアピールを試みることが今後考えられます。
ただしこれは市長のキャラクターによるところが大きく、議論の矢面に立たず、穏便に済ませることを望む市長であれば動画に出るようなことはないでしょう。逆に市長の記者会見を動画で流している市ではこのようなメディアを積極的に使うことも考えられます。
このように動画化は市民側からは手軽でインパクトのあるPR手法として、行政側からは住民理解を求める手法として利用が進んでいくことが考えられます。
ネットワーク上の動画は地域を限定しないので、場合によっては地域の課題が全国のニュースで取り上げられるきっかけになるかもしれません。(99%以上はメジャーなメディアに載ることはないでしょうが)
動画化に関して注意点を挙げるとすれば、
①見えやすい問題にばかり目がいくこと
・動画の特徴として映像になりやすい建物とか困っている人は取り上げられやすいものの、財政赤字とか粛々とがんばって数字をあげている状況のような、映像になりにくいものには光が当たりにくいという欠点があります。財政分析の初期の段階ではわかりにくい、見えにくい財政を見やすくしよう。ということだったのですが、映像化によって見えにくいものをみることから離れていってしまう傾向にあることは心においておかなければなりません。
②分析がおろそかになりがちなこと
・財政白書は、同じデータを市民と行政が共に分析評価するところをベースとして議論することが重要ということを以前書きました。一方動画においては地道な分析よりも、自らの主張に重点を置いてしまいがちです。それ自体は特に悪いことではないのですが、ややもすると分析抜きに過激な物言いをする動画ばかりが注目を集めることになりかねず、同じデータをベースに議論をするはずが、声高な主張と罵り合いの応酬になってしまい、かえって市民を分裂させてしまうという結果になりかねない危険性も持っていると考えられます。
上記2点は動画化がもつ根源的な特徴ですが、だからといって動画化の動きを止めることはできないですし、逆に進めていくべきと考えています。したがって、その動画を見る側、分析する側がその特徴を充分に心に入れた上で、もともとの財政白書・分析の主旨を忘れないように活動することが重要となるでしょう。
次回はそれではこのような分析や情報発信を誰が行うのか、「財政分析の担い手」というタイトルでお送りします。
2009年2月24日火曜日
多摩地域のごみ処理が大変
まずは読売新聞2/23から
”立川分 住民理解得られず”
「立川市が日野市の焼却施設でごみの共同処理を模索している問題で、日野市の馬場弘融市長は22日、同市内で焼却施設の地元住民に対し、共同処理の交渉を進める考えはないと説明した。」
とのこと、地元住民への説明会にて。立川市は老朽化した市の清掃工場の移転を迫られており、施設の建て替えを計画している日野市との共同処理を望んでいるとのこと。
朝日新聞2/20から 小金井市の ごみ処理問題について
”ごみ処理施設協議 関連自治体は困惑・反発”
「住民説明会が開かれた18日夜になって急展開を見せた小金井市の新ごみ処理施設問題。建設場所の正式決定期日としていた2月末を目前にして、同市は話し合いに都が関与することになったと発表、決定期日を09年度末までと繰り延べた。」
ごみ処理場がなくなり、他の市への処理の委託をしている小金井市。これまで焼却場で使っていた土地を使うという案は、これまでそこで共同処理をしていた調布市の反対にあって暗礁。ついに都に関与をお願いした(?)ようです。
関連続報 ”小金井のごみ拒否 西多摩衛生組合も”
読売新聞2月24日
「小金井市の可燃ごみを受け入れている「西多摩衛生組合」の管理者である並木心・羽村市長は、23日開かれた同組合議会の全員協議会で、今月末までに小金井市が新ごみ処理施設の建設場所を決定しなければ、新年度のごみ受け入れを中断すると明言した。」
今月末まで=今週なので実質的に無理を承知での発言ですが、どうするのでしょう。
近年はダイオキシンなどを出さないために炉が大型化しており、本当に各市が持つことが効率的などうかわからない部分もありますが、市民感情とすれば「なぜ他の市のごみを」と思うところもあり、非常に難しい問題です。
連載:財政白書の未来 第6回
第六回 情報発信の未来 その1
~市民からの情報発信の課題~
財政白書は行政が発行するものと市民が発行するものがありますが、それぞれがおかれた立場・状況はかなり違ったものとなっています。
行政は財政白書を公式に発表できる立場にあり、広報やホームページで広く市民に伝えることができるます。一方市民の方は公式に情報発信をできる場を持たないため、行政の情報発信力とは大きな差があります。
現在のところ、市民が作った財政白書を発信する方法のひとつとして確立されている方法は
①財政白書を作成し印刷する(1000部ぐらい)
②マスコミを招いて完成発表する。(読売、朝日の地域版に取り上げられる)
③本屋においてもらう(発行した市及び隣接市ぐらい)
おおよそ一冊500~1000円。多いのは1000円。
今のところペイしている例が多いとのこと。
であり、大和田先生の指導を受けて財政白書を作っている団体はほぼこのような方法をとっている。
最初の印刷費(少なくとも30万はかかっているだろう)をどうするかという切実な問題はあるものの、出版するという大きな目標ができるというメリットがあります。多摩地域で財政白書が多く刊行されているのは大和田先生によりこの方式が広められているという要因もあると考えられ、大和田先生の功績は大きいといえるでしょう。
一方この方法を続けていくには、将来大きな壁が立ちはだかってくると予測されます。
ひとつはニュースバリューの低下です。最初は市民が財政白書を作るということ自体がひとつのニュースになりましたが、多くの市で作られるようになると、後発になるほど目新しい何かがないとニュースとしての価値がなく、新聞等に取り上げられなくなります。
これは本の売れ残りのリスクにもつながるので、後発の市ほど不利になる傾向にあります。
また既に財政白書を出している市でも、同じものでは話題性がない(毎年出すこと自体にも意味があるのですが・・・・)ので、目先を変える必要に迫られます。(これが各論指向につながる)
ホームページなどのインターネット上での発信は、売れ残りリスクはないが、マスコミへの訴求力が弱く、市民一般に知られにくいという欠点があります。
一方でインターネットは見られる環境さえあれば、紙の白書に比べ地域的にも部数的にも範囲が限定されないこと、ホームページへのコメントの受信など双方向性を持ちやすいこと、からうまくいけば市民に広めるという点から効果が高くなる可能性もあります。
このような可能性のあるネット上の白書ですが、残念ながらネット上での効果的な情報発信について将来の方向性を現在のところ示すことはできません。いずれにせよ紙ベースとは何か異なる戦略を持たなければならないことは確かなようです。
紙とホームページのハイブリッドというのもあるようですが(ニセコ町の予算説明書)、これが成立しているのはニセコ町がトップランナーであるからという点が大きく、同じことをしても成功できるのは非常に限られることでしょう。
次回は情報発信に関するひとつの発展形として、動画の活用についてお話をします。