2009年4月26日日曜日

コラム 財政健全化法を勉強する その3

 前回は「再建法(正式名称 地方財政再建促進特別措置法)」について説明をしました。
 今回は再建法が見直されるようになった理由について説明します。(第二回はこちら。)

第三回 再建法の問題点
  再建法は夕張市の財政破綻により見直され、財政健全化法が制定されたわけですが、実はそれ以前から問題点は指摘されていました。
 ひとつは、普通会計以外の第三セクターや土地開発公社などの赤字が見えないこと。
 夕張の前に財政再建団体*1であった赤池町は土地開発公社の赤字を取り込んだため、財政再建団体となりました。逆にそのようなものの膿(うみ)を出す決意をしなければ、膿がたまったままどんどん財政が悪化することとなります。
 例の大金持ちの息子の例えを使えば、「自分が設立している会社の連帯保証」を含めず、家計の状況を評価しているようなものでしょうか。
 
 もうひとつは、財政再建団体となるかどうかの判断の指標となる「実質収支比率」が操作可能なこと。
 第三セクターや土地開発公社の赤字を処理するかしないかの判断もありますが、例えば「借金をすると実質収支がよくなる」ので、財政再建団体となることをさけるために借金をするというわけのわからないことがおこります。
 夕張の場合には一時借入金を他の会計と行ったり来たりさせることで、この数値をごまかしていたようです。
 例えば、総務省の決算カードをみると平成13年から16年まで実質収支比率は0.0%でした。
 ところが、平成17年には突如37.8%の赤字、平成18年は791.1%(!)、平成19年は730%の巨額の赤字を計上しています。これは既に財政破綻していたものをごまかしていたものを平成17年度以降に一気に吐き出したことにより生じたとみられます。
 大金持ちの息子でいえば、銀行の残高を保つためにサラ金から借金をして、家計が赤字でないように見せかけていたようなものです。平成16年は夕張市の歳入の約半分(100億円弱)が”諸収入*2”というものでした。収入500万の家計に例えれば、一年に1000万円サラ金を借りて収支を均衡させていたようなものです。
 後からみれば誰の目にも破綻しているといえそうですが、実質収支上は財政は破綻していないとされていたのです。
  
 また再建法では、早期に是正を促していく機能がないことが指摘されました。再建法により現在財政再建団体に指定されているのは夕張市ただひとつです。ということは1800以上ある自治体で最も財政が悪化した自治体にしか適用されていないということでもあり、そこに至るまでなんら是正がなされないということになります。
 そのため事態が非常に深刻化してからの再建となり、市民生活に与える影響も甚大なものになってしまうというのです。
このような問題に対し、新しい法律「地方財政の健全化に関する法律」では
①公営企業を含めた財政情報の開示
②フロー(実質収支)以外にストック(借金の負担など)を含めた評価指標の開示
③イエローカードの基準を定めることで早期発見、早期健全化を図る
 ことを定めました。
 (参考URL http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/index.html
 次回は、新しい法律による指標について紹介します。

 第4回はこちら


*1正確には「準用財政再建団体」、再建法は本来「昭和29年のみ」の臨時の法律であり、この規定を昭和29年以外に準用(似たような場合に適用するという意味)するため、”準用”財政再建団体という名称になりますが、簡便のため「財政再建団体」といっておきます。
*2諸収入は、「それ以外の収入」として、延滞金、預金や貸付の利子、受託料収入など雑多なものです。一時借入金も含まれるようです。

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