2009年2月22日日曜日

連載:財政白書の未来 第4回

第4回です。(前回はこちら) (目次はこちら

 本日は市民による財政分析の未来ということですが、やっぱり長くなってしまったので2回に分けます。

第四回 市民による財政分析の未来 その1
  ~越えるべきハードル~
○各論の分析を行ううえでのハードル
 前回・前々回と財政白書が各論指向、計画指向となっていくことを説明しました。
 今後、市民と行政がともに共通のデータに基づき分析して議論するようになると書きましたが、実際には市民が個別の課題について分析を行うには、現状では相当なハードルが控えています。
 総論としての財政白書の作成においては、現在では総務省によるデータの公開や市役所によるデータの公開などがあり、全般的に基本的な財政データは集めやすい状況になっています。また市民による財政分析に関する本も市販されており、大和田先生によれば「時間さえあれば誰でもできる」という状況にまでなってきています。
 このような状況が、市民による財政白書作りが盛んになっているひとつの要因であると思います。
 それでも財政分析を財政白書の形にまでまとめるには、分析そのものと同じぐらいのマンパワーとリーダーシップ、動機付けが必要となります。

市民が各論の分析を行ううえでのインセンティブとハードルを下にまとめてみます。
インセンティブ
 ・興味の高い話題に取り組むことができる
 ・身近な話題であれば、実感に基づいた分析ができる
  (実感に流されてしまうというリスクもある)
ハードル
 ・財政データのみならず、行政データ・統計データを集めなければならない
  ~ 行政内部の資料は開示されていないことが多いですし、情報公開をするにしても手続きは慣れない人にはわからないことが多く、勤め人は請求する時間そのものがない
 ・それぞれの市によって各論となるべきものが違う。したがって分析の手法に一定の方法がない
  ~ そのため分析の方法を考えるところからのスタートとなり時間がかかる。

 一般的に、市民(特に会社に勤めにいっている人)にはあまり時間がなく、情報収集力も行政に比べれば劣り、業務ではなく内発的な興味と動機付けによって動いているという面があり、各論にかかわる分析を行っていくうえで、行政とのハンデは大きいものがあります。
 このような状況に対し単に市民側の”がんばり”だけに期待するにはおのずと限界があるといえるでしょう。
 行政としてもよりよい市政運営を目指すのであれば、そのハンデに安住するのではなくそれを埋めるようにするべきでしょう。

○ハードルを越える方向性
 最初に示したハードルについては、ともかくも行政として情報を開かれたものとしていくことが必要です。法的な手続きを経なければ情報公開がなされないというのではなく、基本的な行政情報については誰でもアクセスできる形、なおかつアクセス及び分析しやすい形で公開すべきです。
 昼間は市役所にいけない人、市役所から遠かったり移動が困難な人がいるので、ホームページ上のたどり着きやすいところに、できれば表計算ソフトで読める形式でアップ望ましい。
 急に全部を電子化というのも大変ですので、まずは事務報告書や統計書に記載されている情報からアップしていくのがよいでしょう。
 
 もう一方のハードルを越える方向性としては、分析単位の細分化(モジュール化)と細分化したもののネットワーク化があげられます。これについては次回説明しますが、これにより、より力をかけずに、よりよい分析ができるようになる環境ができてくるものと期待をこめて、予測します。
 実際にこれができるようになる前提は、先に示した情報収集上のハードルが多くの市町村である程度以上低くなっていること。財政白書作りが広まり、相当数の市町村で各論の分析を行おうとする動きが出てくること。であり、そのようになるためには、ある程度の時間を要するものと考えられます。

 今日はここまで、次回は、モジュール化とネットワーク化について詳しく述べるとともに、これを支える情報インフラ面について、お話をしていきたいと思います。

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