前回までのコラムで、日野市民がどれぐらい全体として税金を負担しているか見てみました。
間接税については最終的に負担している人と税務署に支払っている人が違うので、実際に市民がどれだけ払っているか見えにくいという話をしましたが、間接税だけでなく、直接税でも実際の負担者を突き詰めて考えると実は簡単ありません。
例えば、法人市民税を考えてみましょう。法人市民税は法人が払っているのですが、最終的にその負担は法人がしているのでしょうか。
例えば、法人市民税を少し上げたとしましょう。法人の税引き後の利益が減り、自己資本に充てる金額や配当が減ったならば、その税金は法人(つまるところはその株主)が負担したといえます。
しかし上場会社などの場合、配当が減るとその株の人気がなくなり株価に影響することとなります。それがいやなので、配当や自己資本のためのお金を維持しようと思った場合二つの方法があります。
一つは自社が売る製品やサービスの値上げをすること、もう一つは生産のための調達を安くすること、より端的にいえば仕入を安くするか賃金を下げることとなります。
前者のように製品の価格などに転嫁させることを経済学では「前転」、後者のように賃金などに転嫁させることを経済学では「後転」というようです。前転する場合は税の実質的な負担は消費者に、後転する場合は労働者にかかることになります。
実際にはどちらか一方ではなく、両方起こることもありますし、一部株主が負担することもあります。
実はここで終わりではなく、例えば前転させて価格を上げた場合、需要が減って売上の量が減ることが考えられます。その場合は利益が減少し、一部株主が(場合によっては労働者が)負担することとなります。
実際に最終的な負担がどのようになるかは、かなり複雑で経済学の教科書の一章を割くほどのテーマです。
一般論としていえば、独占的な市場(電力とか鉄道とか)では前転することが多く、競争が厳しい市場では後転することが多いことが予想されます。(その理由は考えてみてね。)
また固定資産税は地主にかかるともいえますが、家賃に転嫁されれば賃借人が負担しているともいえます。賃借人が企業で営利活動を行っているのであれば、法人市民税と同様のまた長い説明がこの後に続くことになります。
仮にある市が増税して(今の制度だと一つの市だけが突出して増税するのは難しいのですが、仮にできたとして)、税負担を嫌う市民が他に移住した場合には、得られるべき税金が0になるので、その分は残った市民が負担するといえるのではないでしょうか。
ことほどさように、税の最終的な負担者を特定することは難しいものなのです。
2009年7月14日火曜日
コラム 税金は誰が負担しているのか?
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