2009年2月19日木曜日

連載:財政白書の未来 第1回

今回は「財政白書の未来」の第1回を連載します。

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財政白書の未来
 第1回 財政白書は次のステージへ

 財政白書を発行する市が増えています。東京都下26市の中で18市が財政白書を既に発行し、市民による財政白書も11市で作られ、3月には12市になるといわれています。(*1)

 市の財政状況を表す財政情報は、現在のように財政白書が出る前にも広報その他で公表が行われてきました。このような財政情報の公表と財政白書の違いはそもそもなんでしょう。
 財政白書の未来を論じる前に、まずは財政白書の特徴を私なりに整理してみました。

○財政白書の特徴
 端的にいえば、これまでの財政情報の公表が総務省(旧自治省)が定めた仕事として、出さなければならない情報を発信することが主眼であったのに対し、財政白書は発信したものが市民一般に伝わる・理解してもらうという視点に立っているというのが違いだと思います。
 市民一般に伝わる・理解できるという視点に立つと表現される内容に次のような特徴が生じます。

その1:データを経年的に示す
 広報などによる財政状況の公表では一般的にその年分(又はこれに加えてその前年分)の情報しかないのが普通でした。しかし、財政白書ではここ10~20年程度の推移を掲載するケースが多くなっています。なぜならば、現在の市町村の財政状況はバブル以前からの経済状況と国の政策に翻弄されてきたという面が強く、現在の財政状況を市民に理解できるようにするためにはこれまでの経緯の説明を抜かすことはできないからです。

その2:財政状況の評価とその要素が分析されていること
 財政情報を並べるだけではなく、それが意味するところ、それがなぜ生じたかが分析されていること。そこにどれだけ評価や書き手の意見を入れるかは白書により違いが出ますが、一般に市民が作成した白書のほうが、評価や意見が入ることが多くなっています。

その3:財源や負担の議論が伴っていること
 絵やグラフで見やすくしている予算説明書を出している自治体もありますが、単に何をやってどれぐらい使っているかという業務報告を記載は財政白書とはいえないかと思います。

その4:ビジュアルになっていること
 表よりもグラフが用いられることが多く、またイラストなどを入れてやわらかい感じを出している白書も多くなっています。しかしこれは財政情報をビジュアルにすれば財政白書になるというものではなく、市民に理解してもらおうとする結果として生じるものと考えます。逆にビジュアルでもその1~3の特徴がないものは財政白書とはいえないでしょう。

○変化が必要な財政白書
 財政白書作成の目的として大きいのは、まず市民一人ひとりが財政に関心を持ち、市政への参画を促すことを通じて市民が意見と知恵を反映していくことを通じて、健全財政を推進することと考えられます。(*2)
 このような取り組みは継続性が求められるものなので、特に行政の財政白書は今後毎年継続して発行されるものと思います。
 一方市民が発行する財政白書は、「市民が市民の手で財政白書を作った」ということそのものに価値が見出される部分があり、同じようなものを二回目以降発行するインセンティブ(および話題性)はそれほど大きくないと考えられます。
 現在財政白書作りは多摩地域で盛んですが、全国的にはこれからという感じですので、まずは地域的に広がっていくと思います。しかし多摩地域についていえば、財政白書を作ることそのものについては既に一巡しつつあると考えられます。
 
 それでは今後財政白書はどのような展開を見せていくのか。次回以降考察を進めていきましょう。

 次回は第二回として「財政白書の未来形」をお送りします。

*1:日野市中央公民館「財政講座」資料より
*2:日野いいプラン2010(第四次日野市基本構想・基本計画)から、他市でも同様の目的を持つものと思います。

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