2009年9月30日水曜日

ブックレビュー 資本主義の未来

資本主義の未来です。
 今回で最終回。というかだらだらと長期間になってすみません。
 第13章「民主主義」と「資本主義」
  民主主義と資本主義の共存の難しさ(資本主義は不平等を生み出すが、政治権力を使って分配することが行き過ぎれば企業は税金が低い国に、勤労者もアングラ経済に移っていく)を指摘し、
  不平等をなくし実質賃金を上昇させるのに必要な経済再編ができないとなるとどうなるかの考察として、国民の不満が高まり社会が混乱する悪循環により長期低落傾向に陥ると指摘している。
 その例としてローマ帝国以後1000年にわたって生産が低下した例を挙げている。
  このまま不平等の拡大と実質所得が減少した場合、資本主義は人口の過半数の支持を得られなくなり、民主主義がこれを是正できなければ民主主義もその支持を 失うであろうと指摘、それを是正するには政府が中心的な役割を果たすであろうが、それは社会主義とも福祉国家とも違う形になろう。と予測しています。

 第14章 平衡断絶の時代
 第15章 平衡断絶を乗り切る
 平衡断絶とは、連続的ではなく不連続に物事が変化していくこと。恐竜時代から哺乳類の時代への転換に筆者はたとえていますが、大きくルールのあり方などが変わっていくことを指しています。

 最後のこの2章では、社会における長期的な投資の必要性を訴えています。
  頭脳産業の時代となり、人的資本が重要になる時代には長期の教育への投資、研究開発への投資、インフラ(知的インフラ)への投資が重要になる一方で、資本主義的な考え方からはこれらへの投資は期待できず、政府がその役割を負うべきとしているが、実際に起こっていることは将来のための投資で はなく、現在消費するために借り入れて使っていると指摘している。
 地球環境についてはこのままでは何もされず悲劇を招くとしているが、この点では世界は少しずつ変わりつつあるようですが。
 ここでの面白い指摘としては、
 「民間資本でインフラを建設できるのは市場の動きよりも遅れた時期、市場の動きにぴったりの時期」との記述があり、まさに公共部門の果たす役割を考える指標として参考になるべきものと思います。

 日本については、戦後の資本主義に最も適応してきたとしており、逆にそれだからゆえに(栄えていた恐竜が滅んだように)平衡断絶期のショックを大きく受けると指摘しています。それゆえに今後大きく変わらなければならないとしています。

 長期の連載、だらだらとすみません。やっぱり何回かに分けても、ますます伝えきれないという感じを持ちます。是非、機会があったら手にとっていただければと思います。
 著者は レスター・C・サローです。 

 前回までのブックレビューへのリンクを下記に記しておきます。
第1回 初回です。
第2回 共産主義の崩壊と頭脳産業の時代
第3回 人口の移動と高齢化
第4回 グローバル経済と覇権なき世界
第5回 8~12章

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