2009年8月19日水曜日

ブックレビュー 資本主義の未来 その4

資本主義の未来 第4回です。
 今日はグローバル経済と覇権なき世界 第6~7章。
■グローバル経済
 ○人類史上初めて、どこでもものが作れ売れるようになった。そうなることで、最もコストが安いところでつくり、もっとも利益が上げられるところで売るようになる。
 ○グローバル経済の発展の背景には共産主義の間接的な脅威があった。
  ・植民地支配を宗主国が手放したのは共産主義と戦う理念に反するというアメリカの圧力による。
  ・一つの世界を目指す共産主義のイデオロギーを封じ込めるために、同盟国の経済成長を重視。
  ・終戦後唯一豊かな市場を持っていたアメリカへのアクセスを許すことで資本主義陣営への引止めを図った。
  ・例えば60年代日本の輸出の35%がアメリカ向け、80年代NIESの輸出の48%がアメリカ向け。
   90年代の中国の輸出の半分以上がアメリカ向け。
 ○現在グローバル化を促進してきた脅威はなくなったが、グローバル化をとめることはできない。
 ○地理経済が国の政策を動かしている時代であり、政府ができることは少ない。
  ・規制をすれば取引が逃げるだけ。(例:日経先物取引を日本が規制→シンガポールに移転)
  ・解雇のコストを高くするとコストが低い地域に事業が移る(ヨーロッパで雇用が増えない理由)
  ・国民の消費を直接に支える制度の財源を企業からの税金でまかなうのは難しくなっている。
  ・グローバル市場では規制も税金も少ない方に合わせるように圧力がかかる。
 ○ビジネスに関する規制の大半は「悪徳資本家の時代」と「大恐慌の時代」に作られたもの。
  その当時は世の中に規制しなければならないものがあると人々は考えた。規制がなくなれば
  世の中には規制しなければならないものがあると考えるようになるだろう。
   (この本から12年経った今がその状況になっているといえよう。)
 ○先進国に追いつくときに最初にやらなければならないことはコピー
  ・アメリカも最初はイギリスの繊維工業をコピーをして発展した。
  ・一方新しいアイデアの開発にインセンティブを与える制度も必要。
  ・コピーを無料にし知識を広めることも必要。
  ・しかし全ての国が知識のコピーに頼ろうとすれば新しい産業は育たない。
■覇権なき世界
 ○世界の資本主義は昔ほどアメリカを必要としていない。アメリカに対してノーといいやすくなっている。
 ○世界の警察官になろうというブッシュ(最初に大統領になった方)のビジョンはテレビの力によって不可能になった。
   自国の戦士が血を流すのは一切見たくない
    →そのうち有権者が使用しない軍事力を維持するために税金を払っていることに気づく。
   (実際イラク戦争のときは、かなりメディアのコントロールが行われた。ただこれもネットの世界になると限界はある。)
 ○アメリカの貿易赤字はアメリカがやりたいと思うことを何も制約しない(ドルを発行すればよいので)ように思うが、
  長い間何の手も打たなかったので、リーダーシップがかなり失われた。
  ・ドルが安くなってもアメリカ人の生活水準に大きな影響はない
  ・海外で政治力や軍事力を行使しようとするとコストが高くなる。 → 影響力を発揮しにくくなる。
 ○他にリーダーはいない。ヨーロッパは域内の統合で精一杯。日本は外国人が理解できて参入しやすい経済や社会がない。
 ○民主主義も資本主義も重点は個人にあり人々を結束させるイデオロギーにはならない。
   (共産主義や全体主義のような外部の脅威がないとまとまらない。)
 ○社会にもリーダーがいない
  ・リーダーが登場するのは何かをやらなければならないと思い、その何かがだいたいわかっている後続の者が大勢いるとき
   そのだいたいがまったくわからない時代になっている。

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