2009年3月21日土曜日

ブックレビュー 都市政府のガバナンス

都市政府のガバナンス 吉田民雄著 中央経済社 2003年発行

 この本は、地方自治のあり方について、より根源的なところから理解を深めたい人向け。
 かなり分析的かつ、反復も言い換えが多く、内容が堅いため、どちらかといえば中級者以上又は粘り強く文章が読める人むけ。

 この本の目的として、日本の都市と都市政策や地方自治制度の全般的な変容動向を知るテキストが欲しいという要望や期待にこたえるもの。としています。
 
 ガバナンス(governance)を直訳すると、「統治, 支配」となり、政府が国民をいかに支配するかということのように見えるのですが、この本のテーマは逆で「官、特に中央官庁に独占されている公共性の再構築」がテーマになっています。
 国から県、市という上から下への統治ではなく、市民→地域→市 というより市民に近いレベルから都市政府が持つ力をどのように統治していくかということがこの本の主たるテーマといってもよいでしょう。

 公共的なものというと、行政を思い浮かべ待てしまう人も多いかと思いますが、何が公共的か、何が公の課題かということはそれぞれの地域によって違うもの。これまでどちらかというと中央政府が決めてきた公共性というものを、地域に取り戻し、再構築しようというのが原点としてあり、それを元に都市政府を構成するさまざまなものの今後のあり方を論じています。

 覚えておきたい言葉
 「補完性の原理」:
「個人が自らのイニシアチブによって独力で処理できる事柄を、社会がその個人から奪うことがあってはならない。同様に、社会のより下位の小さな単位が処理解決できる事柄を、社会のより上位の単位が取り上げてしまうことは、不当であり、有害であり、社会を大きく混乱させる。なぜなら、社会のあらゆる行為は、その本質と定義において補助的な(subsidar)ものだからである。」という考え方の基に、個人でできないことを地域で行い、地域で対処できないことを市が、市で対処できないことを県が、県が対処できないことを国が行うという考え方。
 中央がなんでも決めて、下部機関がそれに基づいて実施するという考えとはまったく逆なわけです。

 いくつかの話題
 地方分権改革について : 地方分権一括法が施行された2000年からそれほど経っていない2003年に発行されたということもあり、改革の内容について非常に高く評価しています。今の実態を見たらどう書くのだろうか興味あります。
 市民参加について : 市民参加とわれわれひとくくりにしてしまいますが、市政参加、コミュニティ参加、公益活動参加に分けて論じています。この用語に限らずつい簡単に使ってしまう言葉について、分析的にとらえようとしているのが本書の特徴かと思います。
 その中で、「法律上の市民参加制度は機能していない」「自治会は行政末端機能として利用され、かつ行政依存的性格が強く、形骸化を生み出している」と手厳しい。またサラリーマンの参加については「課題である」としてあり、解決策は見出せていないようである。 
 

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