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2009年12月10日木曜日

財政白書行脚 北海道編1

久しぶりの財政白書行脚
 今回は北海道編です。今回はその1。

 北海道の市はやはり夕張の問題が身近にあるためか、財政への危機感が高く、市民向けの説明資料なども現在調べている東北地方に比較して充実しているように思います。

○札幌市
 札幌は市民版の財政白書がありました。行政が作った説明資料としては
 「さっぽろのおサイフ」が市民向け。平成15年から発行しており、最新は平成21年3月。決算としては平成19年度。


 ギュウ太というなぞのキャラクター、時計台をかぶっています。

 特徴としては・・・
 ①これからの札幌市の財政の課題として、歳入不足に陥るという試算を示しています。
 ②金額が大きいものをたとえるため「札幌ドーム○○個分」とか「一冬の除雪費相当」という札幌独自のたとえを使っています。
 ③行政改革改革プランを簡単に説明。1で「まずは市役所が自ら努力して節約」と宣言しています。

ちなみに平成20年はキャラクターはまーくん と 博士。
 みんなでできる取組の例を出しています。(平成21年度は財政健全化のページができたためなくなった。)
 平成19年までは4ページで平成20年に大幅に充実したみたいです。

○江別市
 財政状況の現状と課題
 平成16年度から出ています。平成21年度は平成20年度決算の数字を使ったものがなんと8月に出ています。
 特に噛み砕いて説明しているわけではないですが、平成元年からの推移や周辺市との比較があるのが特徴。

 また市の強みと弱みを分析しているのが特徴のようです。

○千歳市/恵庭市
 夕張市の財政破綻と直接関係があるかわかりませんが、両市とも市民懇談会などで市の財政状況について説明しています。
 HP上にはその時の説明資料が載っています。
 千歳市は平成16年10~11月(リンクはこちら
  千歳市は各種説明資料も充実しています。
 恵庭市は平成19年度から毎年実施、平成21年度は出前講座をしているようです。(リンクはこちら
  平成19年度はいきなり夕張の実態、それから地方財政や三位一体改革についても紹介、わかりやすくかつ深みもあるので、お勧めです。
  今年度の最後の資料は「国の大型補正で行う事業」の紹介。
  「今まで我慢していた修繕的な事業が多くて将来予定していた投資的な事業がないな。つまり来年度以降の肩の荷が軽くなったとはいえない。」とのコメントが載っています。
 

 
 

2009年8月16日日曜日

夕張市、「自治体クラウド」挑戦 IT先進役に

Nikkei 8/16記事

「財政再建中の夕張市が、道内自治体のIT(情報技術)先進モデルになりつつある。システム改革を今年度から矢継ぎ早に打ち出し、最近脚光を浴びる「自治体クラウドコンピューティング」を実践しつつある。より少ないシステム経費で職員不足を補い、行政事務を効率化するための苦肉の策だが、同様の悩みを抱える他の自治体から注目が集まる。 」

 通常のシステムだとソフトとデータが市役所にあるコンピュータに収まっていて、制度が変わるたびにソフトの改良をしなくてはならないのですが、クラウドになると日本の(世界の?)どこかにあるコンピュータ(特定のものとは限らない)上のソフトとデータを通信回線を通じて利用できるようになります。そうすれば、それぞれの市でシステムを改良しなくても外部のデータセンターでソフトを入れ替えれば対応できるようになります。

 このブログやGoogleマップのように、パソコン上に編集ソフトや地図データはなくてもネットを通じて使えるというのと基本的には同じ考え方。ちなみにクラウドとは「雲」のこと。 データやソフトがどこにあるか意識しなくてもよい。というところからきているようです。以前の関連記事はこちら(記事)参照。

 クラウドにするには慣れ親しんだ専用ソフトから操作が変わるため職員が改めて習得しなければならない操作があり、やや不便な面もあるようですが、夕張市の場合はそうもいっていられないのでしょう。危機的な状態にならないとなかなか変われないという面があるのでしょうが、将来的にコストが安くなるものでしたら是非取り入れていった方がよいものと思います。

 夕張はものすごく大変な状況ですが、逆にそうだからこそいろいろ先進的な動きが出てくるのかもしれません。
 ちなみに夕張市は視察の際に一団体1万5千円の料金を取るとのこと(7~8月限り)。
 一団体1.5万円ではペイしないと思いますので、一人1.5万円を取れるような「先進的な取り組みでお金が取れる市」を目指すというのも一つの方向かもしれません。

2009年6月22日月曜日

夕張市財政再建計画など

夕張市の財政再建情報です。
 http://www.city.yubari.lg.jp/contents/municipal/rebuilding/index.html

 いろいろデータがありますが、一番下の「財政再建計画について」の古い日付のものから順に読むとよいでしょう。
 財政再建計画の変更計画書は一番最後のページでどこが変わったかを見ればよいと思います。

 財政再建計画の内容を見るとかなり恐ろしい。返すべき負債が360億円、これを標準財政規模45億円、市税10億円の市が返すために、最低の住民サービスを最高の住民負担で行い、借金を返している状況です。
 一方、850兆円ともいわれる借金を、88兆円の予算規模、税収44兆円である日本国の財政は夕張市と比べて格段によいとはいえない状況です。夕張市の状況が日本の未来の姿にならないよう一人ひとりが政治や財政をチェックする視線を持たないといけないと思います。
 
 そんな中 東京都から若い職員2名が夕張に派遣されています。
 http://www.soumu.metro.tokyo.jp/03jinji/yuubari/index.htm
 大変なこちらのほうが状況がよりリアルに伝わります。その中での若い職員の報告にはさわやかな感動すら覚えます。
 白書作りとは関係なくお勧めです。

2009年5月4日月曜日

財政健全化法を勉強する その6

前回までは財政健全化法の健全度合いの判断基準について説明しました。
 勉強しながらのコラムにつき、説明不足、わかりにくい点ご容赦ください。
 細かい指標やイエローカードの場合の手続きなど細かい点は、総務省のページ等を参考にしていただければと思います。
 この制度は始まったばかりであり、行政活動への影響は未知数です。都下の自治体ではイエローカードにかかりそうなところはなさそうなので、直接的にどうというより、議会や市民の参画のひとつのきっかけになればと思っています。
 (といいつつ、個々の健全化指標自体のチェックはしづらいと感じますが。)
 
財政健全化法に関する課題として、類書を斜め読みすると以下のことが指摘されているようです。
○公共サービス低下の懸念
 ・公営企業ごとに資金不足をチェックすると、公共が事業から撤退してしまい、サービスの供給者がいなくなるのではないか。
  →これに対しては、事業の性質上計画的に出てくる赤字でやむをえないものを、「解消可能資金不足額」として資金不足額に算入しないことにするという配慮がなされています。が、この配慮に対してもう一方からは「解消可能資金不足額」に恣意性が入る余地があり、無用な延命になるのではないかという懸念を表明されています。 うーん、難しい。
○公会計制度との関連
 ・フローだけではなくストック情報もというが、公会計自体がストック情報を扱うように整備されていない。
  →第4回でのコメントのように、将来負担比率にはいろいろな性質の債務が一緒くたになっているという問題があります。実は偶発的な債務や資産の評価損は企業会計基準においても議論があるところであり、もともと難しい分野です。だからといってそんな指標は意味がないというのではなく、さらによい指標になるようブラッシュアップしていくべきなのだろうと思います。(総務省の都合でしょっちゅう変わるようでは問題ですが。)
○そもそも論
 ・財政悪化の原因は国の政策に負うところが多いのになぜ地方が責任を取るのか。
 ・国で画一的な基準を決め、国が監視・管理をするのは地方自治の原則に反する。

 というところかと思います。
 個人的には、イエローカードを食らうボーダーラインの設定が、国の監視の目が行き届く範囲の数に収まるように設定されるようなので(前々回コラム参照)、かなり財政状況が悪化している自治体のみがエローカード(財政健全化団体)となると思われます。しかしそのような背景を知らない市民から見れば「基準値を超えていない=財政は健全」と思ってしまわないか。そのために、行政健全化の努力がそがれてしまわないかという点を心配します。
 また総務省の研究会では破綻法制(債務の減免)などについても議論されたようですが、財政健全化法では債務の減免が行われることは前提としていません。
 話は民間の倒産に戻りますが、倒産(破産)の意義付けとしては以下のように言われているようです。
 1.個人の再生。事業の失敗など一度の失敗により一生を棒に振るのではなく、債務を軽くして再チャレンジできるようにすること。
 2.事業価値の保全。債権者が借金のかたに、その会社の資産を個別に換金してしまうと、土地や建物、機械、社員が一体となって経済的な価値を有していたものが、価値が毀損してしまい、社会的な損失が生じることから、それを防止するため。
 3.不適切な経営者の退場。倒産により社会の資源を有効に使えない経営者の退場を促し、社会全体としての経営資源の有効活用に役立てるため。

 夕張市のケースを個人に当てはめると、一生かかっても返しきれない借金を背負って食べるものも減らして、寝る時間も減らして働かされているように見えます。個人であれば破産をして、債務の免除を図ることでしょう。自治体財政は家計と似ている*1ということを考えると、いったん破産して再出発をするのがよいように思います。(とはいえ、先進国ではアメリカ以外に自治体の破産を想定している国はありませんが。)

 債務の減免が許されなかった理由を私なりに考えてみました。(あくまで個人的な見解にすぎません。)
 債務の減免には2つのやり方があると思います。ひとつは貸し手責任ということで、金融機関に債務の減免を求めること。もうひとつは国が面倒を見ること。
 前者(金融機関が負担)を仮に実施したとすると、「次はあの町か」ということになり、財政状態の悪い町が資金繰りができない又は、金利がやたらに高くなってしまう。というようなことが起こると想定されます。おそらく大都市の地方債や国債の信頼にまで波及することが予想されます。そうなると債券の価格が下がって破綻する銀行が出るかもしれません。低金利で何とか持っていた国の財政が破綻することもあるでしょう。
 おそらくそのようなリスクは国としては取れないと思われます。
 それでは後者(国が負担)の場合はどうでしょうか。ひとつはモラルハザードの問題があります。最後には面倒を見てくれると思えば、苦しい思いをして財政をよくしようという試みは萎えてしまいます。また自主的な再建をあきらめて国になきつく町も相当出てくるのではと思われます。 ということでこれも国としてはやりにくいということになります。

 という状態の中、夕張市は金融機関にも国にも助けてもらえず、体力を失いながらも返せない借金を返そうとしているというような状態に陥っているようにも見えます。 あるいはこのような状況が全国に報道されることで「財政が悪くなるとこうなるんだぞ」と国が脅しをかけているのかもしれませんが。

今回で一応最終回です。最後は明るい展望の話でなく申し訳なし。
 財政健全化法の本格的な運用は平成21年度からです。関連する動きについては、目先のセンセーショナルなものに惑わされず、じっくり注視していきたいと思います。

*1 自治体の財政は家計に似ている。: 営利企業は利益の最大化を主な目的としています。一方個人(家計)は家族の幸福の最大化を目的としているといえるでしょう。 それでは自治体はどうか?となると考え方としては家計の方に近いのではないかと、つまり自治体の構成員(企業を含む)の効用(平たく言えば幸せ度合い)を最大化することを主な目的としているといえるのではないかと。 という意味でのこのフレーズです。
 ところで、利益の最大化にしても、幸福の最大化にしても、長期的な視点と短期的な視点があります。四半期ごとの利益の最大化が長期的な利益の最大化に直接結びつかないように、短期的な幸福の最大化と長期的な幸福の最大化は違います。
 家計ではできる長期的な幸福の考え方が、多人数多様な利害関係者から成り立つ自治体(国全体がそうだともいえよう)においてはできていないのではないかと。市の財政を自分の家計のように思って考える人を少しでも増えればよいなと思います。
 語句の説明にしては長くなりすぎましたな。 

2009年4月26日日曜日

コラム 財政健全化法を勉強する その3

 前回は「再建法(正式名称 地方財政再建促進特別措置法)」について説明をしました。
 今回は再建法が見直されるようになった理由について説明します。(第二回はこちら。)

第三回 再建法の問題点
  再建法は夕張市の財政破綻により見直され、財政健全化法が制定されたわけですが、実はそれ以前から問題点は指摘されていました。
 ひとつは、普通会計以外の第三セクターや土地開発公社などの赤字が見えないこと。
 夕張の前に財政再建団体*1であった赤池町は土地開発公社の赤字を取り込んだため、財政再建団体となりました。逆にそのようなものの膿(うみ)を出す決意をしなければ、膿がたまったままどんどん財政が悪化することとなります。
 例の大金持ちの息子の例えを使えば、「自分が設立している会社の連帯保証」を含めず、家計の状況を評価しているようなものでしょうか。
 
 もうひとつは、財政再建団体となるかどうかの判断の指標となる「実質収支比率」が操作可能なこと。
 第三セクターや土地開発公社の赤字を処理するかしないかの判断もありますが、例えば「借金をすると実質収支がよくなる」ので、財政再建団体となることをさけるために借金をするというわけのわからないことがおこります。
 夕張の場合には一時借入金を他の会計と行ったり来たりさせることで、この数値をごまかしていたようです。
 例えば、総務省の決算カードをみると平成13年から16年まで実質収支比率は0.0%でした。
 ところが、平成17年には突如37.8%の赤字、平成18年は791.1%(!)、平成19年は730%の巨額の赤字を計上しています。これは既に財政破綻していたものをごまかしていたものを平成17年度以降に一気に吐き出したことにより生じたとみられます。
 大金持ちの息子でいえば、銀行の残高を保つためにサラ金から借金をして、家計が赤字でないように見せかけていたようなものです。平成16年は夕張市の歳入の約半分(100億円弱)が”諸収入*2”というものでした。収入500万の家計に例えれば、一年に1000万円サラ金を借りて収支を均衡させていたようなものです。
 後からみれば誰の目にも破綻しているといえそうですが、実質収支上は財政は破綻していないとされていたのです。
  
 また再建法では、早期に是正を促していく機能がないことが指摘されました。再建法により現在財政再建団体に指定されているのは夕張市ただひとつです。ということは1800以上ある自治体で最も財政が悪化した自治体にしか適用されていないということでもあり、そこに至るまでなんら是正がなされないということになります。
 そのため事態が非常に深刻化してからの再建となり、市民生活に与える影響も甚大なものになってしまうというのです。
このような問題に対し、新しい法律「地方財政の健全化に関する法律」では
①公営企業を含めた財政情報の開示
②フロー(実質収支)以外にストック(借金の負担など)を含めた評価指標の開示
③イエローカードの基準を定めることで早期発見、早期健全化を図る
 ことを定めました。
 (参考URL http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/index.html
 次回は、新しい法律による指標について紹介します。

 第4回はこちら


*1正確には「準用財政再建団体」、再建法は本来「昭和29年のみ」の臨時の法律であり、この規定を昭和29年以外に準用(似たような場合に適用するという意味)するため、”準用”財政再建団体という名称になりますが、簡便のため「財政再建団体」といっておきます。
*2諸収入は、「それ以外の収入」として、延滞金、預金や貸付の利子、受託料収入など雑多なものです。一時借入金も含まれるようです。