2009年2月24日火曜日

連載:財政白書の未来 第6回

第6回です。今回と次回 情報発信の未来形をお送りします。(前回はこちら) (目次はこちら

第六回 情報発信の未来 その1
 ~市民からの情報発信の課題~
 
 財政白書は行政が発行するものと市民が発行するものがありますが、それぞれがおかれた立場・状況はかなり違ったものとなっています。
 行政は財政白書を公式に発表できる立場にあり、広報やホームページで広く市民に伝えることができるます。一方市民の方は公式に情報発信をできる場を持たないため、行政の情報発信力とは大きな差があります。
 現在のところ、市民が作った財政白書を発信する方法のひとつとして確立されている方法は
 ①財政白書を作成し印刷する(1000部ぐらい)
 ②マスコミを招いて完成発表する。(読売、朝日の地域版に取り上げられる)
 ③本屋においてもらう(発行した市及び隣接市ぐらい)
    おおよそ一冊500~1000円。多いのは1000円。
   今のところペイしている例が多いとのこと。
 であり、大和田先生の指導を受けて財政白書を作っている団体はほぼこのような方法をとっている。
 最初の印刷費(少なくとも30万はかかっているだろう)をどうするかという切実な問題はあるものの、出版するという大きな目標ができるというメリットがあります。多摩地域で財政白書が多く刊行されているのは大和田先生によりこの方式が広められているという要因もあると考えられ、大和田先生の功績は大きいといえるでしょう。

 一方この方法を続けていくには、将来大きな壁が立ちはだかってくると予測されます。
 ひとつはニュースバリューの低下です。最初は市民が財政白書を作るということ自体がひとつのニュースになりましたが、多くの市で作られるようになると、後発になるほど目新しい何かがないとニュースとしての価値がなく、新聞等に取り上げられなくなります。
 これは本の売れ残りのリスクにもつながるので、後発の市ほど不利になる傾向にあります。
 また既に財政白書を出している市でも、同じものでは話題性がない(毎年出すこと自体にも意味があるのですが・・・・)ので、目先を変える必要に迫られます。(これが各論指向につながる)

 ホームページなどのインターネット上での発信は、売れ残りリスクはないが、マスコミへの訴求力が弱く、市民一般に知られにくいという欠点があります。
 一方でインターネットは見られる環境さえあれば、紙の白書に比べ地域的にも部数的にも範囲が限定されないこと、ホームページへのコメントの受信など双方向性を持ちやすいこと、からうまくいけば市民に広めるという点から効果が高くなる可能性もあります。
 このような可能性のあるネット上の白書ですが、残念ながらネット上での効果的な情報発信について将来の方向性を現在のところ示すことはできません。いずれにせよ紙ベースとは何か異なる戦略を持たなければならないことは確かなようです。
 紙とホームページのハイブリッドというのもあるようですが(ニセコ町の予算説明書)、これが成立しているのはニセコ町がトップランナーであるからという点が大きく、同じことをしても成功できるのは非常に限られることでしょう。

 次回は情報発信に関するひとつの発展形として、動画の活用についてお話をします。 

2009年2月23日月曜日

連載:財政白書の未来 第5回

第5回です。(前回はこちら)(目次はこちら



第五回 市民による財政分析の未来 その2

  ~モジュール化とネットワーク化~
 各論について市民が分析をする際のもう一つのハードルは分析手法が確立しないことです。
 もちろん情報と時間さえあればできますが、時間が自由に使える人しか参加できないというのでは財政分析の動きが広まっていきません。

 各市の抱える問題は個別性が高いものです。その市の財政に影響を及ぼす主な論点のバリエーションは市の数と同じ数だけあるかもしれません。例えば福祉一つとってみても、各市によりその様相は様々であると予想されます。
 一方、多くの市で共通する問題もあるでしょう。例えば福祉の中でも、国民健康保険に関する問題はほぼ全ての市で共通と考えられます。
 このように、福祉という大きな区切りではバリエーションが豊富でも、ある程度細かい問題に区切ればその内容は共通点が多くなると予想されます。仮に10%の自治体しか同じ問題を抱えていないとしても、全国約1800の市町村があることを考えれば約180の自治体で共通する問題となるのです。

 細かい問題に区切って分析をした場合、その分析をした手法や表は他の自治体でも活用可能です。これを市境、県境を越えて広く共有できれば、分析の手間が軽くなると共に、既にあるものをベースに考えることにより、よりよい分析が可能になるものと考えます。
 
 このように、問題を細分化して広く共有化できるものにすること(モジュール化)とそれを多くの人で共有し情報を交換しながら内容をよくしていくこと(ネットワーク化)が、今後各論の分析を市民側で進める大きな助けとなるでしょう。
 そのイメージは下図



 ここで出てくる一つの課題は、「そのネットワークはどこにあるのか?」「どのように形成されるのか?」ということであろうかと思います。いずれにせよこのネットワークが機能するためには、多数の市で分析が行われ、多数の分析モジュールがネットワーク上にアップされていることが必要です。
 したがってある段階までは広がる速度は遅く、ある時点から急速に広がるのではないかと予測されます。おそらく公的な形ではなく、私的な自然発生的な形で提供されるでしょう。
 基本的にはGoogleのドキュメント公開機能などをベースとしたものになると思いますが、IT環境・技術は日進月歩であり、新しい技術・サービスを活用したネットワークが今後生まれてくる可能性もあります。
 今後具体的にどのような道筋をたどるのか、今後とも考察を重ねるとともに、まとまったら別の機会にまた書いていきたいと思います。
 日野市財政を考える会では上記のようなネットワークづくり、分析モジュールづくりについても取り組んでいきたいと考えています。

 次回は第6回として、「情報発信の未来形」をお送りします。

2009年2月22日日曜日

ブックレビュー:市民のための地方自治入門

しばらくぶりにブックレビューです。
今日は市民のための地方自治入門[改訂版]
 行政主導型から住民参加型へ 佐藤竺監修 今川晃馬場健 編 実務教育出版2005年4月発行

 ・ この本は財政を知るうちに地方自治全般について興味を持った方にお勧め
 ・ 内容としては基礎的な知識があったほうがよいところもあるが、特に難しくはありません。

 ・ 本の目的として、「『行政資源が限られるなかで、地方自治体が市民の間の利害対立の中心に位置し、優先順位を定めて調整の責任を果たさなければならない』という困難な状況下、自治体を運営していくためには、住民自らが主人公として住民主体の行政や政治の展開をする必要がある。
 そのような中で一人ひとりが主体的にまちづくりを進めるための知識面での一助となる」ことを目指している。
 としています。

 大まかな内容は・・・・
 ・明治以来の地方自治制度の歩み
 ・地方自治の構成要素としての住民・組織・財政
 ・地方自治の中での政策過程・情報共有・行政評価の一般論
 ・近年の話題として合併・住民参画・NPM・今後の自治体職員のあり方
 ・その他イギリス・アメリカの地方自治の事例
  を取り上げています。

 全体的に丁寧に説明されており、特に地方自治の歴史は詳しく説明されています。
 明治維新当時の中央集権の考え方 ~たとえば知事は国からの役人だった!など~
  から地方分権へと理念は進みながらも、その都度ゆり戻しと後退を重ねてきた様子がわかりますので、地方分権に興味のある人のための基礎知識としても役立ちます。
 論調も特定の考え方に基づくものではないのでおすすめです。

連載:財政白書の未来 第4回

第4回です。(前回はこちら) (目次はこちら

 本日は市民による財政分析の未来ということですが、やっぱり長くなってしまったので2回に分けます。

第四回 市民による財政分析の未来 その1
  ~越えるべきハードル~
○各論の分析を行ううえでのハードル
 前回・前々回と財政白書が各論指向、計画指向となっていくことを説明しました。
 今後、市民と行政がともに共通のデータに基づき分析して議論するようになると書きましたが、実際には市民が個別の課題について分析を行うには、現状では相当なハードルが控えています。
 総論としての財政白書の作成においては、現在では総務省によるデータの公開や市役所によるデータの公開などがあり、全般的に基本的な財政データは集めやすい状況になっています。また市民による財政分析に関する本も市販されており、大和田先生によれば「時間さえあれば誰でもできる」という状況にまでなってきています。
 このような状況が、市民による財政白書作りが盛んになっているひとつの要因であると思います。
 それでも財政分析を財政白書の形にまでまとめるには、分析そのものと同じぐらいのマンパワーとリーダーシップ、動機付けが必要となります。

市民が各論の分析を行ううえでのインセンティブとハードルを下にまとめてみます。
インセンティブ
 ・興味の高い話題に取り組むことができる
 ・身近な話題であれば、実感に基づいた分析ができる
  (実感に流されてしまうというリスクもある)
ハードル
 ・財政データのみならず、行政データ・統計データを集めなければならない
  ~ 行政内部の資料は開示されていないことが多いですし、情報公開をするにしても手続きは慣れない人にはわからないことが多く、勤め人は請求する時間そのものがない
 ・それぞれの市によって各論となるべきものが違う。したがって分析の手法に一定の方法がない
  ~ そのため分析の方法を考えるところからのスタートとなり時間がかかる。

 一般的に、市民(特に会社に勤めにいっている人)にはあまり時間がなく、情報収集力も行政に比べれば劣り、業務ではなく内発的な興味と動機付けによって動いているという面があり、各論にかかわる分析を行っていくうえで、行政とのハンデは大きいものがあります。
 このような状況に対し単に市民側の”がんばり”だけに期待するにはおのずと限界があるといえるでしょう。
 行政としてもよりよい市政運営を目指すのであれば、そのハンデに安住するのではなくそれを埋めるようにするべきでしょう。

○ハードルを越える方向性
 最初に示したハードルについては、ともかくも行政として情報を開かれたものとしていくことが必要です。法的な手続きを経なければ情報公開がなされないというのではなく、基本的な行政情報については誰でもアクセスできる形、なおかつアクセス及び分析しやすい形で公開すべきです。
 昼間は市役所にいけない人、市役所から遠かったり移動が困難な人がいるので、ホームページ上のたどり着きやすいところに、できれば表計算ソフトで読める形式でアップ望ましい。
 急に全部を電子化というのも大変ですので、まずは事務報告書や統計書に記載されている情報からアップしていくのがよいでしょう。
 
 もう一方のハードルを越える方向性としては、分析単位の細分化(モジュール化)と細分化したもののネットワーク化があげられます。これについては次回説明しますが、これにより、より力をかけずに、よりよい分析ができるようになる環境ができてくるものと期待をこめて、予測します。
 実際にこれができるようになる前提は、先に示した情報収集上のハードルが多くの市町村である程度以上低くなっていること。財政白書作りが広まり、相当数の市町村で各論の分析を行おうとする動きが出てくること。であり、そのようになるためには、ある程度の時間を要するものと考えられます。

 今日はここまで、次回は、モジュール化とネットワーク化について詳しく述べるとともに、これを支える情報インフラ面について、お話をしていきたいと思います。

2009年2月21日土曜日

連載:財政白書の未来 第3回

今回は前回の続きです。 (前回はこちら)(目次はこちら



財政白書の未来
第3回 財政白書の未来形
      ~ 財政白書は計画指向へ~

 前回は白書の内容が総論から各論に重心を移していくというお話をしましたが、各論の分析を進めていくと、市民側の財政白書は分析から提言へ、行政側の財政白書は市民の参画による施策の策定を見据えるものへと進んでいくものと考えられます。
 ところで、近年は施策の策定の段階から市民参画を行う市が多くなってきました。総合計画をはじめとして個別の○○プランというようなものの策定においても、市民を委員とするなど、計画段階から市民の声をいれようという取り組みが広がっています。
 このような取り組みと各論を分析した財政白書作りが合わさることで、財政的なバックグランドについて共通のベースを持つ市民と行政が議論をし、財政的な裏づけを持った計画となることが期待されます。
 財政的な裏づけのない計画はWishリストに過ぎません。各市町村で多くのプランが作られてきましたが、その中でどれぐらい財政的な裏づけを考慮していたでしょう。これまではプランを作っても
「いろいろとやりたいことはわかりました。計画にも載せました。でもお金がないからできませんごめんなさい。」で済ませているものも多かったのではないでしょうか。
 やる可能性のあることを全て掲げておいて、将来なんでもできるようにしておこうという意図が場合によってはあるのかもしれません。
 逆に財政の裏づけがあると、それは単なるWishリストからやるべき責任を持った市民に対する約束となります。行政にとっても市民にとってもこれまでのプランとは比較にならない重いものとなります。
 もちろん歳入をはじめとして将来を見通しにくいものもあります。しかし計画と変わった場合に単に「お金がないので、ごめんなさい」ではなく「こういう理由で変化したので、このようにします」という説明がなされる方があるべき姿ではないでしょうか。

 このような方向で進んでいくと、分析や検討が施策単位で行われることになり、財政白書という名前はふさわしくなくなっていくのかもしれません。今後そのようなものに何らか他の名称をつけていくことも考えるべきでしょう。
 しかしながら、総論の分析である財政白書も個別の施策策定のための分析も
 「市民と行政が」
 「共通のデータに基づき」
 「財政的な裏づけを持ちながら」
 「議論を行うための基盤」
     であることには変わりがありません。

 今後は財政白書は、各論指向・計画指向を強めるなかで
  ”行政と市民が協働で施策を評価・計画するプラットフォームになる。” 
  と考えられます。 下にそのイメージを示してみました。

 
 また参考までに、財政白書総論編からの進化の過程を次にまとめてみました。



 現在は財政白書の総論作りがいろいろな市町村に広まっている段階ですが、既に(特に市民により)財政白書の発行が行われている市では、各論化が進んでいくでしょう。そしてそれを受けるような形で過去および現在の分析評価から、将来の計画作りへと広がっていくと考えられます。
 当面は総論づくりの広がりと各論への深化が進むと考えられますが、次回以降述べることにより、ある程度総論づくりが広がった段階で各論の深化が加速度的に広さと深さをもってくると考えています。

 とはいえ、このようなことが実現していくには実際には相当の時間を要するものと思われます。
 これは将来のひとつの理想形ですが、実現にはいくつものハードルがあります。 
 次回以降そのハードルのうち 市民による財政分析に係わる課題、コミュニケーションに係わる課題につき、そのハードルを乗り越える動きについての展望を述べていきます。

 次回は第4回「市民による財政分析の未来」をお送りします。
  このペースでいくと何回かにわけることになるかな。今回も長かったし。

2009年2月20日金曜日

連載:財政白書の未来 第2回

今回は第二回として「財政白書の未来形」をお送りします。

      (前回はこちら) (目次はこちら)長くなったので2回に分けます。

財政白書の未来
第2回 財政白書の未来形(その1)
      ~ 財政白書は各論指向へ~

○なぜ各論指向になるのか
 今後財政白書は市民が作るものも、行政が作るものも各論指向が進むものと考えられます。
 まず、市民が作る財政白書についていえば、総論編のみを継続して出していくのは実際のところ難しく、各論に移っていかざるを得ないという面があります。
 その理由としては
  • 初回は財政資料の分析そのものが新しいものの発見につながる部分があるが、二回目以降は新しい発見はあまりなく、仮にあっても初回ほどではない。
  • 第二回目以降はデータの更新のみであるとはいえ、相当なマンパワーを必要とするが、発表しても初回ほどの話題性およびインパクトはなく、作るモチベーションが下がりがち。
  • 市民が財政白書を作るきっかけとして、特定の事業の実施又は廃止に疑問を感じた市民が動き出した、というようなこともあり、そもそも興味は各論にある。

 があげられます。市民としては財政全体の認識の仕方というよりも、個別の議論のほうが議論しやすく、実際に市民が既に作っている財政白書では各論が充実しているものもあります。

 一方行政の作っている財政白書は業務として作れるということもあり、各論編を作る動機付けは市民の場合ほど強くはないと考えられます。とはいえ今後は以下の理由により、各論化が進んでいくものと想定されます。

 財政白書は市民に財政状況を伝え、理解してもらうことがことを意図していますが、そもそも市民に財政状況を伝え、理解してもらおうとする理由はなんでしょうか?

 1:やろうとする施策又はやめようとする施策、市民に負担を求めることに関して、市民の理解を求めること。
 実際には行政としては財政白書の中ではっきりはいいにくい面があり、これを主目的とする行政の財政白書はまだないのではないかと思います。

 2:市の財政状況の状況を訴えることで、市民に気づきを与え何らかのアクションをしてもらうこと、具体的には市政への参画を促すこと
例えば日野市の場合は、「わかりやすい財政資料を作る」→「市民参画による健全財政を検討する」ことが総合計画に位置づけられています。他の市における位置づけは未調査ですが、おそらくこちらの目的が主であると考えられます。

 仮に財政白書の発行により2番目の目的達成に一定の効果が現れたとすると、必然的に「財政状況を十分に理解した市民の参画の下」「市の計画、施策や事業について議論を交わす」ということが起こってくると考えられます。
 そのような段階になれば、そこで行われる議論はそれぞれの計画・施策・事業といった各論になることは自然であるといえます。「財政状況を十分に理解した市民の参画の下」に行われる議論を有効にするには、各論に関する財政分析に基づく議論でなければなりません。その議論のベースとして各論の財政白書が必要となってくるでしょう。

 このように、市民側、行政側ともに各論化の流れであろうと思われますが、当面は市民の財政白書が先行する形で各論化が進んでいくものと思われます。

 次回は、上記のような各論の分析とともに起こると予想される計画指向についてお話します。
 第三回「財政白書の未来形 ~ 財政白書は計画指向へ~ 」

2009年2月19日木曜日

公立病院 自治体直営転換 半数以上が検討

2009年2月16日 東京新聞より
”関東1都6県 公立病院 自治体直営転換 半数以上が検討”

「関東一都六県の公立病院の半数以上が自治体による直営方式の見直しを検討していることが、東京新聞のアンケートで分かった。公立病院の大部分は経営難に直面しており、総務省は来月までに改革プランの提出を求めている。具体的には非公務員型の独立行政法人化や民間病院への運営委託が多かったが、プラン策定の効果については、効率化に偏重する国の姿勢に反発する意見が目立った。」

 記事によると、関東の121の病院にアンケート調査をした結果、
  直営方式の転換を検討している:49病院
    非公務員型の地方独立行政法人:32
    民間医療法人への運営委託   :11
    公務員型の地方独立行政法人 :5
    民間譲渡              :3
  他病院との再編や統合を検討している :24
 とのこと。
 ちなみに自由記述では「医師の確保が不透明で先行きが読めない」「自治体レベルで解決できる問題ではなく、効果が期待できない」といった意見が目立った。
 
  日野市も市立病院があり、アンケートに答えたかどうかわかりませんが、こちらも今後の動きが注目されるところです。