2009年3月16日月曜日

地方債と地方交付税 第六話

それぞれの町を治めることになった猫の三王子(前回はこちら)今回は続きです。


 第六話 不景気がやってきた。


 三匹の王子はそれぞれの町に散っていきました。海辺の町には猫太郎、川辺の町には猫次郎、山辺の町には猫三郎。
 それぞれの町の猫たちはよく働き、荒地は畑に変わり、道路は作られ、猫たちは繁殖し、国は栄えていきました。親猫たちは猫の手も借りたいほど忙しく、父猫も母猫も働くようになりました。それぞれの町で子猫を預かる施設も作られました。老猫が増え、関連する施設もできました。
 3人の王子は次から次へと出てくる猫たちのニーズにこたえていきました。町を治めるお金がよりかかるようになりましたが、国が順調に栄えていき、猫吉からもその分補助がもらえたので、なんとかやりくりができました。

 新しいニーズが生じるたびに猫吉からは追加のマニュアルが送られ、マニュアルはますます分厚くなっていきました。


 成長を続けてきた猫の国ですが、荒地があらかた畑になったころから、その成長は鈍ってきました。 今まで通りの成長を見込んでお金を借りていた人が返せなくなったりして、世の中の金回りが悪くなってきました。いわゆる不景気という状態です。
 そんなある日猫の国の王、猫吉は息子たちを集めていいました。

 猫吉「わが国の経済は、これまでにない状況になっている。国として経済の建て直しを図らなければならない。」

 猫太郎「経済の建て直しといっても、われわれにいったい何ができるでしょう。」

 「君はケインズをしらないな。不景気は需要の不足から起こるのじゃ。こういうときは国が需要を作り出さなければならぬ。道路をもっと立派なものにするのじゃ。猫たちが遊ぶ施設を作るのじゃ。」
 猫次郎「働かずに遊んだら生産が減るのではないでしょうか。」
 猫太郎「必要な道路はもうできています。」

「今は生産は足りている。とにかくお金を使わせることが大事じゃ。道路や施設を作ればお金が建設会社にまわる。建設会社は資材を作る業者にお金を払う。給料をもらった人は消費に回すというわけじゃ。遊ぶところができれば、そこでお金を使うだろう。」

 猫三郎「建設にはお金がかかります。補助をいただかなければ。。。」
 「不景気じゃからな。国の財政も大変なのじゃよ。しかしじゃ、弟の銀行が貸してくれるから心配するな。」

 「でも貸したものは返さなければだめでしょう?」
 「そこでじゃ。返済に必要な費用は『町を治めるのに最低限必要なお金』に算入してあげよう。」

 「それならばよいでしょう。」 「それならばよいでしょう」
 といって、猫次郎と猫三郎は町へ帰っていきました。猫太郎も釈然としないながらも、帰っていきました。 



(解説)
 経済成長と停滞の状況はあくまで猫の国の物語とご理解ください。実際の国の経済はこんなに簡単にまとめられるものではありませんので。
 さて、財政の役割としては3つあるといわれています。(アメリカの経済学者マスグレイブによる)
 ひとつは、道路などの公共財の供給
 もうひとつは、所得の再分配(豊かな人からそうでない人への所得の移転)
 そして3つめは、経済の安定化(インフレを抑えたり、需要を喚起したりすること)です。

 一般的に所得の再分配や経済の安定化は、一自治体がやっても効果がないので国が果たすべき役割とされています。日本では国が地方の自治体を動員して公共投資を促進するなどの景気対策を行ってきました。
 バブル崩壊後は国が直接補助するのではなく、「借金をしてよい」というお墨付きを与えることで、自治体がお金を借りやすくして、土木事業などに投資を行わせるように誘導してきました。将来借金の返済は国が面倒を見るということで、それぞれの自治体も借金をして公共投資を盛んに行いました。
 その結果地方自治体の借金は平成4年の61兆円からその10年後の平成14年度には134兆円にまで急増したのです。
  (ビジュアル版地方財政白書より)

 財政の役割として一つ目に挙げた”公共財の供給”については、その公共財の供給による効果と費用が問われます。
 一方、不景気は需要が供給に追いつかないことにより起こるものとすると、”経済の安定化”という視点に立つと不景気時にはとにかく需要を増やすことが重要ということになります。 そのために経済の安定化という名目での公共投資はその質が問われにくくなってしまう恐れがあると思います。

 公共投資はひとつの政策決定であり、それはどのような形であれ特定の人に対する利益を伴います。今は100年に一度の危機などといわれているようですが、経済対策がそれを隠れ蓑にした利益誘導となっていないか。冷静に見ていく必要があるでしょう。

2009年3月15日日曜日

ブックレビュー 地方財政論

地方財政論 片桐昭泰、兼村高文星野泉 税務経理協会 2000年2月発行

この本は・・地方財政についてそれを構成する制度の内容を知りたい人向け。
 本書の目的としては「複雑な地方財政の現状、問題点、改革の方向を検討し、住民が地域の主人公としてどのようにしたら地方財政を統制できるか明らかにしようとした」と記されています。

 大学の授業の教科書とすることを想定しているのか、書き方は全般に堅め。それぞれの制度についてはその意義や法的な根拠について詳しく説明してあるのが特徴。
 全体的には多くの話題を盛り込んでおり、また「近年の地方財政の課題と展開」を紹介しているものの出版時期が制度改革(地方分権や介護保険)の時期であり、内容的にはそれほど深く入り込まないうちに説明が終わってしまっているという印象を受ける。
 最後にアメリカ、イギリス、ドイツの地方財政について簡単に紹介しています。

2009年3月14日土曜日

鎌ヶ谷市 財政白書

東京都以外の市の財政白書も取り上げていきたいと思います。 更新は不定期。

 今日は鎌ヶ谷市、市としては財政白書はありませんが、学生たちのグループ「ザイバク」(財政に爆発的にくわしくなるということらしい)が平成20年3月に発表。かなり前に財政を考える会で入手しました。


リンクはこちら http://www.geocities.jp/zaisei_kamagaya/top/top.html
 第2版が出たそうです。

 内容は、市の財政にかかわる項目が詳しく説明されており、地方財政のわかりやすいテキストとしても参考になりそうです。
 最近宮崎大学の学生が作成する前は、学生による唯一の財政白書だったかと。
 学生は時間もエネルギーもあるのに、あまり例がないのはなぜだろうなどと、この年齢になると思うのですが、自らの学生時代を振り返ると、まともに勉強すらしてなかったので、まあ他にいろいろとやることがあるのだろうな などと。

 
 それはそうと、 行政の資料としては、こちら
  http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sesaku/sesaku_zaisei.html
 主に総務省が作成すべきとしている資料を公開しています。

 財政の概況を理解するのはこちらのほうがよいかも   http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sesaku/gyouzaisei_kaikaku/sesaku_gyouzaiseikaikaku01.html
 シリーズ行財政改革~財政破綻しないために~

地方交付税と地方債 第五話

猫吉王から3つの町を任された3人の王子、王の命を受けてそれぞれの町に向かいます。(前回はこちら



第五話 猫太郎の独り言

 (文字が全部赤いと見づらいので全て黒文字としますね。)

猫太郎は帰りの車の中で父の言葉をつらつらと思い出しながら、考えていました。
「そういえば、足りない部分は王の年貢の中から一定割合を出すということだったが、さて不作の年はどうするんだ?」

「不作でもそれぞれの町で必要なお金は変わらないから、不作の年は猫次郎や猫三郎に補てんしなければならないお金も増えるはず。」

「それを補てんするのは王の年貢の一定の割合だが、それも不作のときは減ると思うのだが?」
 猫太郎はどうも理屈が合わないように感じます。

「まあどうせ、僕にはあまり関係のない話だからいいや。いざとなれば銀行家の弟からなんとかするんだろ。」
 と一人つぶやいて車の中で寝てしまいました。

(解説)
 地方交付税は国に入る税金の一定割合を財源が足りない自治体に交付することになっています。
 その割合は、所得税・酒税の32%、法人税の34.0%、消費税の29.5%、たばこ税の25%(平成19年度)です。
 しかし景気が悪くなると、所得税・法人税が減る一方で、地方の財源不足も増えます。
 そうなると、これだけでは地方自治体の財源不足をまかないきれなくなってしまいます。

 ということで、実際にはどうしているかというと「交付税特別会計」という国の特別会計が借金をしています。

 その借金の残高は平成19年度末で33.6兆円(地方の負担分だけだったかな?)となっているとのこと。

 国民一人当たり30万円弱です。国の本体も600兆の借金を抱えるなか(こちらを参照)どうやってこれを返していくか、気が遠くなりそうです。

2009年3月13日金曜日

地方交付税と地方債 第四話

前回借金は慎むべきという教訓を与えた猫吉 今日はその続きです。


第4話 借金してもよいとき

猫次郎「でも道路を作るときとか、大きなお金が出るときはどうするのですか。」
猫吉「確かに、『借金は慎むべし』とはいったが、借金をしてはいけないとはいっておらん」
「道路や建物など、後々まで使えるものを作るときは、借金をしてもよい。」

猫三郎「さっきとは真逆なんですが・・・・。」
「そうではない。道路や建物は後の世代の人も使うものじゃ。ということは今の世代の人も後の世代の人も負担するというのが、世代間の公平性を保つということになるのじゃ。つまり、それぞれの世代で借金を返して、それぞれ負担するというわけじゃ。

「ということは、道路や建物とか、形になるものならば、どんどん借金してよいというわけですね。」
「もちろん、どんなものというわけにもいかないし。金利がつくものだからいくらでもよいというわけにはいかない。」
猫太郎「結局のところ、どこまでならばよいのですか。」
「それは、計画の内容を見せてもらった上で、わしが決める

「ということで、特に質問がなければ、今日はこれまでとする。それぞれの町に行ってよく治めたまえ。」

(解説)
地方財政法は同じ第5条で借金をしてもよい場合を5つ挙げています。具体的にはリンク先を参照ですが、

 メインは第5号の「学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費の財源とする場合。
 要は耐用年数のある程度長い公共施設や土地の取得に充てる場合です。 

 猫吉の話もあるように、長期間使われるものはそれが使える世代の人みんなに負担してもらおうということなのです。
 では、長期間使われるものであればなんでもよいのかというとそうではありません。
 特に箱物と呼ばれるものは機能させるためには水光熱費などの経費がかかりますし、期間が経過すると老朽化し維持修繕費も必要となります。
 借金までして作ったものが、もし仮に役に立たない、使われないものだったらどうでしょう。
 後の世代の人は、役に立たないものを作るための費用と利子、さらに経費や修繕費まで負担しないといけないのです。その人たちにとってみれば、まさに「責任者出て来い!」って感じでしょう。
 従って、そのようなものを作るときは後々の世代を含めた人たちが、今の世代が決めた負担を喜んで受け入れられるようなものとしなければならないのです。その意味で長期的なものにかかる意思決定は責任が重いといえるでしょう。
 
 次回はまた地方交付税の話に戻っていきます。
 

2009年3月12日木曜日

地方交付税と地方債:第三話

3つの町を息子たちに任せることとした猫の国の王、第二話の続きです。(前回はこちら

第三話 借金はだめよ。

猫吉「それから最後に、借金はくれぐれも慎むように。」
猫太郎「それはなぜですか。」
「借金は返さなければならないものじゃ。それは何から返すかというと年貢じゃ。つまり、今年のサービスのために、来年のサービスを減らすことになるのじゃ。」
「だったらプラスマイナス0のような気もするのですが。」
「いいや違う。猫の町でも移動があるから、借金をした年にいた猫は年貢を払わずにサービスを受けられるが、借金を返すときの猫はサービスなしで借金を返すだけになってしまう。世代ということで考えられば、子供はサービスがなく親の借金を返すだけになってしまうことになるからじゃ。」

(解説)

地方財政法第5条では、「地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。」と書いてあります。つまり借金をしないというのが原則です。
 それは上にも書いてある通り、主に世代間の公平のため(負担なしでサービスを受ける人と、サービスなしで負担だけする人が出てしまう。)です。
 それでは次の世代でも同じように借金をすれば、次の世代もサービスを受けられ、その借金を返す世代でもまた借金をすれば・・・と続けていけば理屈上は成り立つようにも思いますが、実際には借金には利子がつくので、どこかで必ず破綻します。

このようにいつかは破綻するものは「持続可能性がない」又は「サステナブルではない」といいます。
市や国の財政を評価していくうえでは「これをずっと続けていけるのか?」つまり「持続可能性があるか」という視点を持つことが重要です。

 とはいえ、実際は同じ法律の第5条で地方債(借金)をしてもよいことになっています。世代間の公平のためにも借金をしてもよい場合があるのです。それについては次回のお話とさせていただきます。

2009年3月11日水曜日

地方交付税と地方債 第二話

3つの町を息子たちに任せることとした猫の国の王、第一話の続きです。
第一話はこちら
第二話 不足分はいくら?
猫次郎「父上、ともかく、今年はいくらいただけるのでしょう。」
猫吉「そうじゃな。わしの見たところこうじゃ。」 と王様は一枚の紙を出しました。
「山辺の町 : 年貢60 必要費用100。不足分100-60×3/4=55
 川辺の町 : 年貢100 必要費用100。不足分100-100×3/4=25
 海辺の町 : 年貢160 必要費用100。不足分100-160×3/4<0 ゆえに0」
「という具合じゃな」
猫三郎「実際に60集まらないかもしれない。」
「60は去年の実績じゃ。今年これより低いようであれば来年反映する。ただし年貢の徴収漏れとかは自己責任じゃ。」
「災害とかそういうので、思わぬ出費があったらどうしましょう。」
「それは、その事情を考慮して わしが決める。」

「それからじゃ。」と猫吉がいうと、執事が分厚い本を持って恭しく入ってきました。
「町の運営については、マニュアルにまとめておいた。よく読んでそれに基づき執り行うのじゃぞ。」

(解説)
 地方交付税の考え方はおおよそ上の通りです。この物語では3人(匹?)のうち1人だけが不足分がないことになっていますが、今の日本では47都道府県中2のみ、市町村では約1781のうち179のみが不足分がないことになっています。
 この不足分がない市町村など「不交付団体」といっています。
 実は東京はこの不交付団体の占める割合が多くなっています。(30市町村のうち17市町:除く島嶼部)

 さて、猫次郎が質問した「年の途中で思わぬことがあった場合などのための交付税」が特別交付税といわれるものです。
 (説明はこちら http://www.town.takatori.nara.jp/soumu/zaiseijyoukyou/html/bottom/tihokohuzei.htm*1)
 先日ニュースで取り上げた「地域手当上乗せで交付税減額」で出た特別交付税がそうです。
 地方交付税の総額の6%がこの特別交付税に充てられることになっています。
 特別交付税も交付の基準が定められているのですが、「特別の事情が存することにより過大であると認める場合においては」減額できることとなっており、ある程度恣意性があるものと思われます。
 逆に合併した市には個別の配慮があるなど、地方をコントロールする道具としても使われているように思います。

 普通交付税も基準があるのですが、基準が毎年変わる+算定が複雑、でつまるところ、市の財政担当者としてはいくらもらえるかは予測が困難で、国任せという面があります。
 そこらへんを集約した言葉が「わしが決める」というところなのかなと思っています。

*1当初総務省のページとリンクしていましたが、リンク切れとなったので4月に高取町のHPへリンク換えしました。