2009年3月19日木曜日

地方財政白書公表

3月16日 日経、毎日、読売の各紙で報道されました。
 
タイトルは
日経 地方財政の硬直化が加速、社会保障の経費増 09年地方財政白書
毎日 地方歳入また前年割れ
読売 地方財政、最も硬直化した水準に…政府が「白書」閣議決定

各紙共通の内容は
普通会計の歳入総額は91兆1814億円(前年度比0・4%減)、歳出総額は89兆1476億円(同0・1%減)
「経常収支比率」は、過去最高の93・4%(同2・0ポイント増)
読売では「普通会計が負担すべき借入金残高は198兆5507億円(同1兆6038億円減)。地方債残高は138兆1579億円、交付税特別会計借入金残高の地方負担分が33兆6173億円、企業債残高が26兆7755億円となっている。」と借金の総額も紹介。
実質収支の総額も紹介していました。

 それに毎日と読売はこれらの数字の紹介のみ。日経は
 「データがさかのぼれる1969年以降最悪で、財政の硬直化が進んでいることを示した。地方が景気対策などで独自の施策を打ち出しにくくなっている。
 07年度は地方の歳出、歳入ともに小幅ながら8年連続で縮小した。児童手当の拡充などで社会保障関連の扶助費が増えたが、公共事業が減ったことで前年を下回った。歳入も国から地方に渡る交付税が減り、国から地方への税源移譲で地方税が増えたが、それに伴って地方に渡る所得譲与税が減った。地方が受け取る国庫支出金も公共事業の抑制で減った。」
と解説しているが、この記事から何かわかる人は既にわかっている人で、ほとんどの人には意味するところがわからなかったのではいかと思われます。

 紙面の関係があるので、そのたび全部解説するわけにもいきませんし。
 これが、GDPの発表や失業率の発表あるいは日経平均株価ならば、細かい解説なしでもその数字からある程度経済の動向は読み取れるでしょう。 財政の指標もこれらに負けないぐらい重要なのですから、市民一人ひとりがこれらの指標を読み取る力(財政リテラシーともいうのでしょうか)をあげていくことが大事と思います。

2009年3月18日水曜日

お勧め財政白書 その1

多摩地域の財政白書を中心にお勧めの財政白書を紹介します。

 財政白書自体はこれまで既に紹介したので、今回以降何回かに渡ってテーマごとに紹介していきます。
 何回シリーズになるかは不明。

第1回目は財政についての基礎的なことを知りたい人むけ
   ~今回は地方財政全般について~

 ○そもそも財政とは?
  ・日野市 本編P2(PDFでいうとP10)
  ・国立市 P2
    地方債と地方交付税 第六話でも財政の機能について少し書いています。
  こういう基本的なことはウィキペディアとかを見たほうがよいか?

 ○地方財政を取り巻く状況
  ・福生市 P1~4 バブル前から現在までの経済状況と政府の経済対策、そしてそのためにおきた地方の財政への影響についてある程度詳しくかつまとめて書いています。

 ○借金をする意義
  ・八王子市 平成20年度版 P60
  ・川崎市  P12
    地方債と地方交付税第四話 でも紹介しています。

 ○三位一体に関わる話題
  ・国と地方の関係
   東村山市 平成19年度決算 P11 
   国立市  第5章の国と地方の関係 ~ずばっとものを言っていてよいです。
   西東京市 平成17年度決算 P36
   川崎市 平成18年度版
  ・税源移譲について
   八王子市 平成20年版 P22
   川崎市  平成19年度版
  ・財政白書以外のサイトを過去に紹介しています。
   http://myfavor100.blogspot.com/2009/02/blog-post_06.html

  続くかなぁ。徐々に増やしていきます。
   まとまったらひとつのファイルにしたほうがよいんだろうなぁ。
 

2009年3月17日火曜日

川崎市 財政読本

川崎市の財政読本を紹介します。
 ページはこちら
 http://www.city.kawasaki.jp/23/23syomu/home/dokuhonn20/index.html

 前半が平成20年度の予算の紹介、後半が平成18年度の財政状況を説明になっています。
 イラスト多用で親しみやすいです。
 ごみ処理や緑地公園、教育、子育てなど市民に関心の高いものについて一人当たりの経費をしめしたりしています。

 後半は主に人件費や扶助費から始まり、実質公債費比率や、財政運営上の12の指標などページ数が少ない中でも盛りだくさんの内容です。 予算の決まり方や行政改革プランなど他の白書では紹介していないものも盛り込んであります。

 ただし、政令指定都市なので、財政規模や財政構造が違うので、政令指定都市以外の市の人は自分の市と比較はできないと思われますが。
 

2009年3月16日月曜日

地方債と地方交付税 第六話

それぞれの町を治めることになった猫の三王子(前回はこちら)今回は続きです。


 第六話 不景気がやってきた。


 三匹の王子はそれぞれの町に散っていきました。海辺の町には猫太郎、川辺の町には猫次郎、山辺の町には猫三郎。
 それぞれの町の猫たちはよく働き、荒地は畑に変わり、道路は作られ、猫たちは繁殖し、国は栄えていきました。親猫たちは猫の手も借りたいほど忙しく、父猫も母猫も働くようになりました。それぞれの町で子猫を預かる施設も作られました。老猫が増え、関連する施設もできました。
 3人の王子は次から次へと出てくる猫たちのニーズにこたえていきました。町を治めるお金がよりかかるようになりましたが、国が順調に栄えていき、猫吉からもその分補助がもらえたので、なんとかやりくりができました。

 新しいニーズが生じるたびに猫吉からは追加のマニュアルが送られ、マニュアルはますます分厚くなっていきました。


 成長を続けてきた猫の国ですが、荒地があらかた畑になったころから、その成長は鈍ってきました。 今まで通りの成長を見込んでお金を借りていた人が返せなくなったりして、世の中の金回りが悪くなってきました。いわゆる不景気という状態です。
 そんなある日猫の国の王、猫吉は息子たちを集めていいました。

 猫吉「わが国の経済は、これまでにない状況になっている。国として経済の建て直しを図らなければならない。」

 猫太郎「経済の建て直しといっても、われわれにいったい何ができるでしょう。」

 「君はケインズをしらないな。不景気は需要の不足から起こるのじゃ。こういうときは国が需要を作り出さなければならぬ。道路をもっと立派なものにするのじゃ。猫たちが遊ぶ施設を作るのじゃ。」
 猫次郎「働かずに遊んだら生産が減るのではないでしょうか。」
 猫太郎「必要な道路はもうできています。」

「今は生産は足りている。とにかくお金を使わせることが大事じゃ。道路や施設を作ればお金が建設会社にまわる。建設会社は資材を作る業者にお金を払う。給料をもらった人は消費に回すというわけじゃ。遊ぶところができれば、そこでお金を使うだろう。」

 猫三郎「建設にはお金がかかります。補助をいただかなければ。。。」
 「不景気じゃからな。国の財政も大変なのじゃよ。しかしじゃ、弟の銀行が貸してくれるから心配するな。」

 「でも貸したものは返さなければだめでしょう?」
 「そこでじゃ。返済に必要な費用は『町を治めるのに最低限必要なお金』に算入してあげよう。」

 「それならばよいでしょう。」 「それならばよいでしょう」
 といって、猫次郎と猫三郎は町へ帰っていきました。猫太郎も釈然としないながらも、帰っていきました。 



(解説)
 経済成長と停滞の状況はあくまで猫の国の物語とご理解ください。実際の国の経済はこんなに簡単にまとめられるものではありませんので。
 さて、財政の役割としては3つあるといわれています。(アメリカの経済学者マスグレイブによる)
 ひとつは、道路などの公共財の供給
 もうひとつは、所得の再分配(豊かな人からそうでない人への所得の移転)
 そして3つめは、経済の安定化(インフレを抑えたり、需要を喚起したりすること)です。

 一般的に所得の再分配や経済の安定化は、一自治体がやっても効果がないので国が果たすべき役割とされています。日本では国が地方の自治体を動員して公共投資を促進するなどの景気対策を行ってきました。
 バブル崩壊後は国が直接補助するのではなく、「借金をしてよい」というお墨付きを与えることで、自治体がお金を借りやすくして、土木事業などに投資を行わせるように誘導してきました。将来借金の返済は国が面倒を見るということで、それぞれの自治体も借金をして公共投資を盛んに行いました。
 その結果地方自治体の借金は平成4年の61兆円からその10年後の平成14年度には134兆円にまで急増したのです。
  (ビジュアル版地方財政白書より)

 財政の役割として一つ目に挙げた”公共財の供給”については、その公共財の供給による効果と費用が問われます。
 一方、不景気は需要が供給に追いつかないことにより起こるものとすると、”経済の安定化”という視点に立つと不景気時にはとにかく需要を増やすことが重要ということになります。 そのために経済の安定化という名目での公共投資はその質が問われにくくなってしまう恐れがあると思います。

 公共投資はひとつの政策決定であり、それはどのような形であれ特定の人に対する利益を伴います。今は100年に一度の危機などといわれているようですが、経済対策がそれを隠れ蓑にした利益誘導となっていないか。冷静に見ていく必要があるでしょう。

2009年3月15日日曜日

ブックレビュー 地方財政論

地方財政論 片桐昭泰、兼村高文星野泉 税務経理協会 2000年2月発行

この本は・・地方財政についてそれを構成する制度の内容を知りたい人向け。
 本書の目的としては「複雑な地方財政の現状、問題点、改革の方向を検討し、住民が地域の主人公としてどのようにしたら地方財政を統制できるか明らかにしようとした」と記されています。

 大学の授業の教科書とすることを想定しているのか、書き方は全般に堅め。それぞれの制度についてはその意義や法的な根拠について詳しく説明してあるのが特徴。
 全体的には多くの話題を盛り込んでおり、また「近年の地方財政の課題と展開」を紹介しているものの出版時期が制度改革(地方分権や介護保険)の時期であり、内容的にはそれほど深く入り込まないうちに説明が終わってしまっているという印象を受ける。
 最後にアメリカ、イギリス、ドイツの地方財政について簡単に紹介しています。

2009年3月14日土曜日

鎌ヶ谷市 財政白書

東京都以外の市の財政白書も取り上げていきたいと思います。 更新は不定期。

 今日は鎌ヶ谷市、市としては財政白書はありませんが、学生たちのグループ「ザイバク」(財政に爆発的にくわしくなるということらしい)が平成20年3月に発表。かなり前に財政を考える会で入手しました。


リンクはこちら http://www.geocities.jp/zaisei_kamagaya/top/top.html
 第2版が出たそうです。

 内容は、市の財政にかかわる項目が詳しく説明されており、地方財政のわかりやすいテキストとしても参考になりそうです。
 最近宮崎大学の学生が作成する前は、学生による唯一の財政白書だったかと。
 学生は時間もエネルギーもあるのに、あまり例がないのはなぜだろうなどと、この年齢になると思うのですが、自らの学生時代を振り返ると、まともに勉強すらしてなかったので、まあ他にいろいろとやることがあるのだろうな などと。

 
 それはそうと、 行政の資料としては、こちら
  http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sesaku/sesaku_zaisei.html
 主に総務省が作成すべきとしている資料を公開しています。

 財政の概況を理解するのはこちらのほうがよいかも   http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sesaku/gyouzaisei_kaikaku/sesaku_gyouzaiseikaikaku01.html
 シリーズ行財政改革~財政破綻しないために~

地方交付税と地方債 第五話

猫吉王から3つの町を任された3人の王子、王の命を受けてそれぞれの町に向かいます。(前回はこちら



第五話 猫太郎の独り言

 (文字が全部赤いと見づらいので全て黒文字としますね。)

猫太郎は帰りの車の中で父の言葉をつらつらと思い出しながら、考えていました。
「そういえば、足りない部分は王の年貢の中から一定割合を出すということだったが、さて不作の年はどうするんだ?」

「不作でもそれぞれの町で必要なお金は変わらないから、不作の年は猫次郎や猫三郎に補てんしなければならないお金も増えるはず。」

「それを補てんするのは王の年貢の一定の割合だが、それも不作のときは減ると思うのだが?」
 猫太郎はどうも理屈が合わないように感じます。

「まあどうせ、僕にはあまり関係のない話だからいいや。いざとなれば銀行家の弟からなんとかするんだろ。」
 と一人つぶやいて車の中で寝てしまいました。

(解説)
 地方交付税は国に入る税金の一定割合を財源が足りない自治体に交付することになっています。
 その割合は、所得税・酒税の32%、法人税の34.0%、消費税の29.5%、たばこ税の25%(平成19年度)です。
 しかし景気が悪くなると、所得税・法人税が減る一方で、地方の財源不足も増えます。
 そうなると、これだけでは地方自治体の財源不足をまかないきれなくなってしまいます。

 ということで、実際にはどうしているかというと「交付税特別会計」という国の特別会計が借金をしています。

 その借金の残高は平成19年度末で33.6兆円(地方の負担分だけだったかな?)となっているとのこと。

 国民一人当たり30万円弱です。国の本体も600兆の借金を抱えるなか(こちらを参照)どうやってこれを返していくか、気が遠くなりそうです。